パワー半導体の将来を考える上での重要な課題は、シリコンデバイスからシリコンカーバイド (SiC) やガリウムナイトライド (GaN) に代表されるワイドバンドギャップ化合物半導体にいつになったら本格的に移行するかというところにある。シリコンMOSFET、 IGBTはスーパージャンクション型MOSFET、トレンチFS型IGBTの誕生で特性限界に近づきつつあり、いよいよワイドバンドギャップパワー半導体の登場も現実味を帯びてきた。どんな素子がいつごろ本格的にマーケットに登場するのか? 特長は?課題は? 最近のSiC・GaNデバイスの発表データを見ると、オン抵抗に代表される低損失特性は目を見張るものの、長期信頼性に関しては特有の課題があり、未だ解決の余地があるようである。 シリコンパワーデバイスの誕生から現在のワイドバンドギャップ最先端素子に至るまでの開発の歴史を振り返りながら、素子構造、諸特性、限界特性、設計思想、製造プロセスの特異性など、素子設計、製造プロセス、またアプリケーションの立場を通して多角的な観点から詳細に説明する。