高分子の複合材料の進歩は、機械強度を得ることから始まった。無機Filler添加では衝撃強度などが、Elastomer添加では曲げ剛性などが達成できなかった。そこで、3元樹脂化の時代を経て、現在はNano分散で求める機械強度がある程度実現できるようになった。Polymer Alloyでは、非相溶性構造をSpinodal分解、Binodal分解の詳解から複合材料の構造制御に展開し、さらにはNano構造化から、材料特性の進展を実現している。
一方最近は、高分子複合材料として、電気伝導性、熱伝導性、収縮性、ガスバリヤ性などの特殊物性を求める応用分野が多くなり、Compound, Polymer Alloyとの関連で大きく技術進歩をしている。その背景では、従来の混練技術の応用、あるいは従来技術から見えてくるものが沢山存在する。どのように練ったらよいかという疑問が常について回る。しかし特殊物性発現技術は、まさに現在が発展段階にある技術分野であり、定説があるわけではない。講演者は過去の技術を中心に関連をお話しするが、聞いていただく方々には回答を得るためではなく、少しでも袋小路にある思考から逃れる糸口を探す意味合いで、私の話を聞いていただきたい。本講演がそのきっかけになることを願う。
- Compound 複合化の基礎
- 無機Fillerのみを分散する一般物性
- Elastmerのみを分散する一般物性
- 三元樹脂Compoundとその一般物性
- 無機粒子小粒子分散特性 (submicron, Nano)
- Bound Polymer (Rubber) 発生と高強度化のメカニズム
- Nano分散による高強度材料の実現
- Polymer Alloy 小粒子分散特性 (submicron, Nano)
- Nano分散による高強度材料の実現 (粒子間応力干渉からの解明)
- 分散品質の数値化と同一品質操作領域
- 各種分散装置の実現対応領域
- 特殊物性実現の分散方法
- 均一粒子径、均一分散を特徴とする分散形態と応用分野
- 不均一性を均一に分散する分散形態とその応用分野
- 直交分散形態
- 応用部品成形との関連性
- 各論1 Compound
- Non-halogen難燃性PP (RoHS対策)
- 複屈折ゼロ樹脂Compound (テレビ業界の救世主技術)
- 高熱伝導Compound
- 絶縁製品への応用、ALN, BNなど
- 樹脂開発との共存の必要性
- 導電製品への応用、Graphiteなど
- 樹脂軽量化に対応できるFillerの開発
- 各種繊維補強材料
- CNT (SWCNT, MWCNT)
- CNF (Carbon Nano Fiber)
- BNF (CNF=Cellulose Nano Fiber)
- ガスバリヤ
- 無機材料蒸着からNano Filler層形成技術まで
- 有機EL封止特性までが実現できている
- 自己修復技術および樹脂の応用
- 熱収縮ゼロ樹脂
- ZrW2O8 (~-9ppm/℃) の第1世代
- Mn3XN (~-40ppm/℃) の第2世代
- BiaLabNiO3 (~-82ppm/℃) の第3世代
- その他
- 各論2 Polymer Alloy
- Spinodal分解とBinodal分解特性
- Living 重合
- 非弾性アロイ (NOVA)
- 3成分相互複合系Alloy
- Nano double gyroid
- その他
- 均一分散手法の一例:Slurry分散技術
- Extruder, Mixerの応用に関する考え方
- 質疑応答