本セミナーでは、「植物工場」で栽培をするための環境形成について、特に栽培装置の構造や管理法と、植物の管理法などについて概説いたします。
わが国は、気候条件が良好で、極端には暑くも寒くもなく、年間の降雨量も多く、土壌も良好である。そのために、作物が生育するということについては詳細には理解しないまま、季節程度を考慮するだけで栽培をしている例も多い。すなわち、植物の生育には風やCO2が必要であることや、水がなぜ必要か、植物の生育にどのような肥料成分がどの程度必要か、といったことを知らずに栽培を行っている生産者も多い。 植物は、水とCO2を原料にして、葉で光合成を行って有機物を合成して生育しているので、原料を豊富に与え、光合成が進みやすい環境条件を形成することが、植物の生育を促進し、高品質の生産物を得るという栽培の基本となる。 「植物工場」が露地や温室で栽培するのと根本的に異なるのは、「植物工場」では植物の生育条件のすべてを植物の生育に好適な状態に管理する必要があることである。精密農業といわれるゆえんである。栽培環境を好適に維持・管理できると、植物の生育や品質は飛躍的に向上する。太陽光型での昨年度の実績では、トマト果実の年間収量50t/10aを達成した。見えてきた課題を解決する、あるいは夏の暑さがあまり問題とならない北海道であればさらに多くの収量を得ることは十分可能である。人工光型では、栽培装置も栽培法も、作物もまだ多くの課題を抱えているのが現状である。 「植物工場」は科学的な栽培技術であり、養液栽培は植物工場生産の基本技術である。 本講座では、「植物工場」といわれる場で栽培をするための環境形成について、特に栽培装置の構造や管理法と、植物の管理法などについて概説する。