米国から始まったシェール・ガス革命、シェール・オイル革命は、カナダにも拡大し、北米全体の天然ガス生産量は急速に増加している。 2013年には、北米地域の天然ガスは、ほぼ供給が需要を上回る状況となる。米国をはじめとした北米のエネルギー情勢は急速に変貌し、ほんの1年前までは日本人の多くにほとんど知られていなかった100年に1度といえるエネルギー革命が起こっている。 米国におけるシェール・ガスをはじめとした非在来型天然ガスの生産増と、天然ガス価格の暴落である。21世紀は環境の世紀、天然ガスの世紀と呼ばれ、天然ガス需要は急増の一途を辿り、在来型天然ガスの資源量から考えて、天然ガス価格は百万Btu (ブリティッシュ熱量単位) 当たり20ドルを突破すると考えられてきた。 ところが、予想外の米国における天然ガス生産増によって、天然ガス価格は、福島第一原子力発電所事故により世界的に天然ガス火力発電需要が増加しているにもかかわらず2012年4月には1.8ドルまで下落している。2013年4月に、ようやく米国の天然ガス価格は4ドル台に回復している。 これは、チェサピークをはじめとした米国の中堅石油企業による既存技術の組み合わせによる革命的ともいえる、非在来型天然ガスの生産コストの低下に起因する。米国への天然ガス輸出が激減するカナダと、米国国内の天然ガス生産だけでは大きな利益を挙げられない状況にある米国石油企業は、シェール・ガスを原料としたLNG (液化天然ガス) 輸出プロジェクトを積極的に進めている。カナダはLNGの輸出許可を出し、米国エネルギー省も2013年5月中にもLNGの輸出許可を新たに出す可能性がある。 こうした北米のLNG輸出は、19ドルという割高なLNGを購入している日本にとって、安価な天然ガス調達ソースとなるとともに、既存のLNG契約における価格引き下げ交渉の材料ともなる。既に、総合商社、石油企業、プラント・メーカーは、米国、カナダのシェール・ガス権益の取得を進めるとともに、LNGプラントの権益を取得している。 さらに、出光興産をはじめとした石油化学企業は、米国のシェール・ガスを原料とした石油化学プラントの建設を計画している。米国、カナダ、メキシコは、世界有数のシェール・ガス埋蔵量を誇り、日本企業にとってのビジネス・チャンスは極めて大きい。安価で大量の米国のエネルギー革命は、世界の資源地図を塗りかえる可能性も強まってきた。 今後の米国、カナダにおけるLNGプロジェクトに関連する日本企業にとっての莫大なビジネス・チャンスについて、シェール・ガスの第一人者が詳細に解説する。