本セミナーでは、架橋点が自由に動くという特異な特徴を持つ環動高分子の合成法・物性から応用動向まで解説いたします。
(2013年6月24日 13:00〜14:40)
東京大学 新領域創成科学研究科 物質系専攻 教授 伊藤 耕三 氏
我々は、2000年ころにトポロジカル超分子のポリロタキサン構造を利用して、従来とは全く異なる架橋高分子材料 (超分子ネットワーク) を合成した。具体的には、高分子量のポリエチレングリコール (PEG) を用いて-シクロデキストリン (-CD) がすかすかに入ったポリロタキサンを合成し、次に異なるポリロタキサン上の-CDを化学的に架橋することで、8の字状の架橋点が自由に動く高分子材料を初めて作成し、これを環動高分子材料 (Slide-Ring Materials) あるいは超分子ネットワークと名付けた。 1839年にグッドイヤーによる化学架橋の発見以来、架橋高分子材料については、架橋点が固定していることを前提としてこれまでに実験・理論の両面で膨大な研究が行なわれてきたが、2000年になって架橋点が自由に動く材料が初めて登場し、架橋高分子材料に関するこれまでの常識が次々と塗り替えられつつある。 本講座では、環動高分子材料の基礎と合成法、応用などについて解説する。
(2013年6月24日 14:50〜16:00)
アドバンスト・ソフトマテリアルズ (株) 事業統括部 部長 (工学博士) 野田 結実樹 氏
ポリロタキサンを架橋した環動高分子材料は、架橋点が自由に動くことで、従来の化学架橋高分子とは異なる特異的な物性を示すことが、伊藤らによって明らかにされている。 当社ではこの新しい高分子材料の量産化を世界で初めて実現し、セルム製品シリーズとして上市した。 本講演では環動高分子材料ならではの特徴・機能を生かし、実用化が進んでいる製品の詳細を紹介すると共に、今後の見通しについて述べる。