第1部 明細書の不備で権利化ができなかった事例と対策
(2013年5月30日 10:30〜13:00)
山本秀策特許事務所 特許G 生物化学部門 リーダー 弁理士 (侵害訴訟代理付記) 博士 (薬学) 駒谷 剛志 氏
政府が知財推進を前面に押し出す中、知財戦略の重要性が再認識されている。しかし、基本となる特許出願、重要な明細書の整備についてはこと軽視されがちである。
出願の実務では「明細書に始まり明細書に終わる」とよく言われる。それは、出願実務のみならず、特許戦略全体にも当てはまる。
医薬・バイオにおいては、明細書の書き手の問題、というよりは、研究開発全体のものであるし、何を開示し、開示しないかは経営戦略が影響する。
グローバルにみても、米国実務等では、先発明主義もあり、従来「後だし」が可能といわれていたものが、最近の判例の傾向をみると、出願時の記載が権利範囲を左右することになる例が増えており、米国が事実上の先願主義に移行した今後は出願時の明細書重視の傾向は強まるものといえる。
本講座では、明細書実務の現在のトレンドを紹介し、具体例をみつつ、今後の対策を実務者、発明者、経営者の視点で分析する。
- 明細書の機能
- クレーム
- 権利解釈
- 明細書は経営戦略そのもの
- 明細書の審査基準
- クレームの記載要件
- 明細書の記載要件―サポート要件
- 明細書の記載要件―実施可能要件
- 日米欧での温度差~米欧の基準と比較する
- データ
- 日米欧の記載要件に関する近時の判例
- 日本の最近の動き
- 米国の最新判例~米国の日本化
- 欧州の審決例
- その他
- 事例分析
- クレームの記載 からなる
- 用語の定義の不備
- クレームのサポート不足による残念な事例
- クレームのカテゴリー
- 対策
- 出願前の戦略が肝心~「とりあえず」出願などもってのほか、仮出願でも「論文そのまま」は危険
- 国内出願の段階からのグローバル対応の必要性
- 用語の定義の確認
- 仮想敵の想定
第2部 最近のLCM延長に関する裁判例の解説
(2013年5月30日 13:50〜16:30)
日本大学大学院知的財産研究科 教授 青山特許事務所 顧問弁理士 加藤 浩 氏
医薬品のライフサイクルマネジメントは、企業の経営戦略として重要な役割を担っており、とくに、特許権の存続期間の延長は、医薬品の収益力を大きく左右する重要な観点です。
本講演では、特許権の存続期間の延長に関する最近の裁判例を中心にご紹介し、実務上の留意点について考察します。講演者は、特許庁で20年間、この分野の特許審査・審判を担当しておりますので、経験に基づく分かりやすい講演が行われる予定です。
- 特許権の存続期間延長の現状
- これまでの経緯と最近の傾向
- 存続期間延長の重要性の高まり
- 最高裁2011年 (行ヒ) 第326号 (2011年4月28日)
- 最高裁判決の経緯と判示事項
- 前審 (知財高裁) の判示事項との関係
- 最高裁判決と改訂審査基準との関係
- 最高裁判決の社会的インパクト
- 特許権の存続期間延長を巡る最近の裁判例
- 医薬品の剤形の変更について
(抗ウイルス用医薬組成物事件:知財高判2010年 (行ケ) 第10177号、等)
- 医薬品と特許クレームとの関係について
(エタネルセプト事件:知財高判2009年 (行ケ) 第10092号、等)
- 医薬品の適応症の程度の相違について
(アリセプト事件:知財高判2009年 (行ケ) 第10423号、等)
- 医薬品特許の延長される期間について
(シクロスポリン事件:知財高判2009年 (行ケ) 第10097号)
- その他の判決例
- 欧米における特許権の存続期間延長の実務
- 米国の制度と実務について
- 欧州の制度と実務について
- その他 (途上国の制度の状況)
- 今後の展望
- 裁判例から見た今後の注意点
- 審査官の視点から見た注意点
- 考察 (まとめ)