放送番組などの映像コンテンツの制作、二次利用にあたっては、権利者と利用者との間で、あるいは発注者と受注者との間で、さまざまな契約が交わされます。
業界の商慣習としては、契約書を交わすケースより、交わさないケースのほうが多いと思われます。口頭で何らかの約束をして、その約束が履行されれば契約書を交わさなかったとしても、契約は成立しています。
その契約の場面で、契約書を交わさなければ、その後のソフトの活用等で、①一方の当事者が有利になり、他方の当事者が不利になるケース、②いずれの当事者においても有利、不利が生じないケースの2通りがあります。
いかなるケースでも契約書を交わした方がよい、ということが建前としては言われますが、契約書を交わさない方が有利な当事者は、契約書を交わすことにより逆に不利になってしまいますので、敢えて契約書を交わさないほうが、より賢い選択ということにもなります。
本講演では、映像ソフトの制作等の各場面で、契約書を交わしたほうがよいケース、交わさなくても大丈夫又は交わさないほうがよいケースについて、豊富な具体例を用意してご説明します。契約書を交わした方が有利になるというケースでは、契約書の文面の具体例もご紹介します。
また、契約で合意したことは必ず効力を生じるというわけではなく、一方の当事者が「優越的な地位の濫用」を行えば、独占禁止法違反で排除の対象になりますし、強行法規に違反する場合は契約の合意が無効になることもあり得ます。そのようなケースについても、具体例を用いながらご説明します。
番外編として、契約書と印紙税の点についても、基礎知識をお伝えした後、契約書作成を行う実務者にはとっておきのお話 (内容は、当日のお楽しみ) も致します。
- 映像コンテンツ内の各種「権利者」との契約
- 原作者との契約
- 脚本家との契約
~「団体協約」による「契約自由の原則」の修正
- 音楽の使用契約
~委嘱楽曲の場合、既製楽曲の場合
- その他著作物の使用契約
~絵画、写真、映像など。委嘱作品と既製作品
- プロデューサー、監督、演出家との契約
- 職業的出演者との契約
~出演者が「実演家」のケースとそうではないケース
- 一般人出演者との契約
~「映像ソフト二次利用の合意書」を取る必要はあるか
- その他
- 映像コンテンツの完成パッケージ製作発注契約
- 放送局と制作会社との製作発注契約の問題点
~「窓口権」の法的性質、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」(公正取引委員会、1998年3月) 、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」 (総務省、2009年2月)
- テレビCMの製作発注契約
~契約書を交わさなかったケースで、テレビCMの映像の著作権が広告主に帰属すると判断した知的財産高裁判決 (「カーニバル」事件、2012年10月25日判決) の分析~映像の著作権は受注した制作会社にあるとする常識を覆し、著作権は資金提供者に帰属するとした判断の射程
- 完成パッケージ製作発注契約と制作協力に係る役務提供契約との異同
- スポーツ試合・大会などの中継放送契約
- スポーツの主催者が有する「権利」の法的性質
- 演劇、コンサートなどの中継放送契約との異動
- 「擬似権利者」が要求する「契約条件」の法的効力
美術作品の所有者、建物の所有者が撮影を許可する際に、二次利用の際の追加「利用料」の支払を求め、それに合意した場合、当該合意に法的拘束力はあるか、その他
- 番外編:契約書と印紙税+マル秘話
印紙税が必要な出演契約書と不要な出演契約書、印紙税の「節税」と「脱税」との違い、その他
- 質疑応答/名刺交換