電磁波の伝搬/遮断を制御する人工構造体の一つであるメタマテリアルは、単位セル (あるいはメタ原子・分子) と呼ばれる波長に比べて十分小さな構成要素からなり、実効誘電率および透磁率を所望の値に制御する設計技術のことである。 伝送線路モデルを用いてメタマテリアル中の電磁波伝搬をわかりやすく記述し、その物理的意味を詳細に述べる。非金属である誘電体粒子からなるメタマテリアルを紹介し、非磁性の誘電体粒子が磁気双極子のような振舞いを示す場合に、全体構造の実効透磁率の値を生の値だけでなく0もしくは負の値に制御できることを示す。また、誘電体からなるメタマテリアルの構成法を分類し、それぞれの動作原理を等価回路モデルにより解説する。 続いて、実効屈折率が0となるメタマテリアルを、共振器の構成要素として用いた場合に見られる現象として、0次共振を紹介する。この0次共振は、共振器の両端反射条件を人為的に変えることにより、共振状態を連続的にダイナミックに変化させることが可能である。 さらに、順方向が正の屈折率、逆方向が負の屈折率を示す非相反メタマテリアルを紹介する。この非相反メタマテリアルを共振器に用いると、共振周波数を固定したまま、共振器サイズを自由に変えることができ、さらに進行波共振器のような電磁界分布を示す。 これらのメタマテリアルの応用例として、小型で高効率なビーム走査アンテナおよび偏波回転制御可能なアンテナを紹介する。