新医薬品の開発において、開発候補品の製剤化、有効性の証明、安全性の確保等を目的として種々の試験が実施されます。非臨床試験は、動物を用いて開発候補品の薬効薬理作用、体内動態、毒作用等を調べるために実施されます。開発候補品の臨床試験は、非臨床試験において有効性が期待でき、かつ毒性にも問題がないデータが得られた場合に実施されます。第Ⅰ相臨床試験は、新医薬品開発においてヒトへ開発候補品が最初に投与される試験です。本試験の結果は開発候補品の新医薬品としての開発の成否に大きな影響を及ぼします。 第Ⅰ相臨床試験を実施する前には、開発候補品の非臨床試験データを用いてヒト初回投与量が設定されます。これまでは、主として毒性試験より得られたパラメーター (NOAEL) を用いてヒト初回投与量が設定されてきました。しかしながら、2006年に実施されたTGN1412 (免疫系にアゴニスト作用を有する抗体) の第Ⅰ相臨床試験において、NOAELから設定された初回投与量を投与された被験者に重篤な副作用が発生しました。従って、このような薬理メカニズムを示す開発候補品では、これまでとは異なった概念 (薬理試験から得られたパラメーター (MABEL) を使用) によるヒト初回投与量の算出方法が提唱されています。 ヒト初回投与量の設定には非臨床試験のデータが使用されます。従って、非臨床試験のデータを活用して適正なヒト初回投与量を設定することは、より安全な第Ⅰ相臨床試験の実施、ひいては迅速かつ円滑な新医薬品開発に繋がります。本セミナーでは、非臨床試験のデータを活用するヒト初回投与量の算出方法を紹介します。