本セミナーでは、SiC、GaNを上回る性質を持つ酸化ガリウム、そしてダイヤモンド半導体材料について、研究の現状とパワーデバイス開発動向について解説いたします。
(2013年5月29日 10:30〜12:00)
筑波大学 数理物質系 電子・物理工学専攻 教授 岩室 憲幸 氏
パワー半導体の将来を考える上での重要な課題は、シリコンデバイスからシリコンカーバイド (SiC) やガリウムナイトライド (GaN) に代表されるワイドバンドギャップ化合物半導体にいつになったら本格的に移行するかというところにある。 シリコンMOSFET、IGBTはスーパージャンクション型MOSFET、トレンチFS型IGBTの誕生で特性限界に近づきつつあり、いよいよワイドバンドギャップパワー半導体の登場も現実味を帯びてきた。どんな素子がいつごろ本格的にマーケットに登場するのか? 特長は?課題は? 最近のSiC・GaNデバイスの発表データを見ると、オン抵抗に代表される低損失特性は目を見張るものの、長期信頼性に関しては特有の課題があり、未だ解決の余地があるようである。 シリコンパワーデバイスの誕生から現在のワイドバンドギャップ最先端素子に至るまでの開発の歴史を振り返りながら、素子構造、諸特性、限界特性、設計思想、製造プロセスの特異性など、素子設計、製造プロセス、またアプリケーションの立場を通して多角的な観点から詳細に説明する。
(2013年5月29日 12:45〜14:15)
(独)産業技術総合研究所 ダイヤモンド研究ラボ長 鹿田 真一 氏
SiCの実用化が進み、さらに次世代パワーデバイスの候補として、究極の材料としてダイヤモンドが検討されている。 また最近レーザーやASICのヒートスプレッダなど一般的工業材料として利用されつつあり、Si,SiCパワーデバイスの放熱材料としても期待がかけられ、そろそろダイヤモンドに関する理解が必要な時期になってきた。 本講座では、ダイヤモンドの一般物性、半導体物性を解説し、データ提供する。材料・ウェハ合成については、単結晶、多結晶、ナノ結晶を含む内容の進捗概要を紹介し、最後にパワーデバイスの開発状況について紹介する。
(2013年5月29日 14:30〜16:00)
(独)情報通信研究機構 未来ICT研究所 総括主任研究員 東脇 正高 氏
酸化ガリウム (Ga2O3) は、次世代パワーデバイス用途の新半導体材料として大きく期待できる優れた材料物性を有する。また、原理的に大口径かつ高品質な単結晶基板を、融液成長法により安価、簡便に作製することが出来るという産業上大きな魅力も有する。これら二つの特徴を有する半導体材料であるにも関わらず、世界的に見ても研究開発が全くの手付かずであった。 我々は、世界に先駆けてGa2O3パワーデバイス研究開発に着手し、世界初の単結晶Ga2O3トランジスタの作製、動作実証等の研究成果を着実に積み重ねてきている。本講演においては、最初に他の材料系も含めた現状の半導体パワーデバイス研究開発の背景について述べた後、Ga2O3パワーデバイスの位置付け、魅力、現在までの研究開発状況および今後の計画について紹介する。