UV硬化技術はコーティング、インキ、接着剤、フォトレジスト、エレクトロニクス部材、自動車関連部材など広い領域で表面加工技術として広く利用されている。この技術は高速で硬化できるので熱硬化に比べて経済的であり、溶剤を利用しない、あるいは極度に低減できるので環境保全の立場からますます重要になってきている。
この技術は光源、フォーミュレーション (配合物:オリゴマー、モノマーおよび開始剤など硬化する材料) および応用 (高速プロセス、用途など) の要素技術から成り立っており、原理的には簡単であるが、実用化に当たっては必ず理解しておかないとトラブルを起こすことがある。
本講ではUV硬化を利用するにあたっての必須事項 (光源、フォーミュレーション、硬化過程の評価、硬化物の評価など) の解説とトラブル対策 (酸素硬化阻害、硬化収縮、黄変など) を中心に講義する他、あらかじめ質問を受ける、あるいは講義中の質問をまとめて回答するなどの討論形式で疑問点の解決を図る。個人的な質問は講義の後で時間をとって答える。
なお、最近の話題であるハイパーブランチポリマーの利用、チオール・エンUV硬化、無機ー有機ハイブリッド系UV硬化、UVアニオン硬化およびUV-LED硬化技術の動向についても紹介する。
- はじめに
- 光源の選択
- 紫外線 (UV) の選択
- 光源:高圧水銀ランプとメタルハライドランプの選択 (クリヤーコートと印刷インキ) 、最近登場したUV-LEDおよびキセノンパルスランプなどの長所と短所:これらの光源を用途によってどう使い分けるか
- 光の波長、強度の理解とUV硬化における活用法
- UVラジカル硬化
- 光開始・熱硬化反応の特長
- 開始剤の選択 (硬化速度を決める材料)
- 開始剤がなぜ必要か、光源とのマッチングとは何か、短波長硬化と長波長硬化の違いと利用法
- 例:紫外線吸収剤共存下でのUV硬化 (耐侯性硬化物) 、着色物のUV硬化など
- モノマーおよびオリゴマーの選択 (硬化物の物性を決める材料の選定方法)
- 高分子の基礎物性からみたモノマーおよびオリゴマーの選択法
- 構造とセグメント運動 (硬い硬化物と軟らかい硬化物の設計法) (応用例:クリヤーハードの設計、粘着剤の設計など)
- モノマーおよびオリゴマーの構造と選択法の具体例:塗膜の硬さおよび伸び率を調製する具体例
- 硬化収縮とその対策:オリゴマー、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーの利用
- 酸素硬化阻害対策法:添加物の利用 (アミン、エーテル、シランなど) チオール・エンUV硬化法
- UV硬化物の黄変と硬化物の耐候性
- デュアル硬化法
- 光があたらないところの硬化 (光と熱、光と湿気の利用)
- 基材との密着および密着不良対策法
- 硬化速度を上げるための方法
- UVカチオン硬化:酸素共存下でも利用できる硬化法
- UVカチオン硬化の長所と欠点
- UVラジカル硬化と比べてどのような利点があるのか、最近の動向はどうなっているのか
- 開始剤 (光酸発生剤) からの酸発生機構と重合開始活性について
- モノマー (エポキシ化合物) の構造と硬化性
- 素反応と硬化機構
- 硬化速度の加速法
- 増感剤の利用、モノマーの選択 (オキセタン、ビニルエーテルの併用など)
- UVアニオン硬化:新しいUV硬化法の提案
- UVアニオン硬化の意義
- 光塩基発生剤の開発動向
- UVアニオン硬化の実用化:現状と展望
- UV-LED硬化法の特長と現状 (低温硬化のメリットとデメリット)
- UV-LEDの開発と硬化法への活用 (特長と欠点)
- 印刷およびインクジェットインキの乾燥、塗料での活用の現状
- 硬化過程の追跡法と硬化物の評価
- 硬化過程の追跡
- RT (リアルタイム) -FTIRによる硬化過程の追跡
- Photo-DSC (光熱分析法) による硬化過程の追跡
- レーザーラーマン分光分析を利用する硬化度の解析
- 製造工程におけるリアルタイム硬化追跡法
- 近赤外反射法を利用するリアルタイム硬化追跡法
ii) 蛍光を利用する硬化過程の追跡法
- 硬化物の評価 (ハードコートの評価)
- 指触法
- ラビングテスト:耐溶剤摩耗性 (メチルエチルケトンなど)
- 鉛筆硬度 (基板の硬度に注意)
- 密着試験 (クロスカット試験)
- ユニバーサル硬度:フィッシャー硬度計 (微小圧子によるへこみの程度評価と弾性率評価)
- おわりに:UV硬化技術の今後の展望
- 参考文献