ゲノム診断に基づくオーダーメード治療、分子標的薬、iPS細胞など、ゲノム解明によって医薬品分野では革命的な変化が始まっている。平均寿命100歳超も夢物語ではなくなってきた。技術の進歩によって、人口増加や高齢化は予測以上に進む可能性が出てきている。保険や年金といった社会制度の見直しが迫られるだけでなく、ライフスタイルや価値観を変えるきっかけにもなるだろう。 ハイテクの専門機器や新薬は、単価を上げる要因にもなっている。米国では“医療費破産“は今や日常的な光景になりつつある。労働人口の減少で財政は年追う毎に厳しさを増しており、公的医療だけで全てを負担するとは不可能だ。「生命」を差別してはいけないが、経済的な理由から全ての人達が同じサービスを受けられる訳ではない、という現実はある。 一方、外国人を含む「富裕層」からは、クオリティーの高い医療サービスを求める声も年々強くなっている。日本でも、海外で安く治療を受ける「医療ツーリズム」への注目が高まっている。「医療のグローバル化」が本格的に始まったのである。 医療、ヘルスケアを取り巻く環境やテクノロジーは、今後10年、15年でどのように変わるのだろうか。本講演では、変化のシナリオや将来像など、今後の戦略立案のための「前提」を提示したい。