再生可能エネルギー・ビジネスの象徴といえる太陽電池企業の相次ぐ破綻によって、米国オバマ大統領が打ち出したグリーン・ニューディール政策は大きく色褪せたものの、再生可能エネルギー、蓄電池と組み合わせた地球環境に優しいエネルギー供給システムの構築は世界経済の流れとなった。スマート・グリッド (次世代送電網) のコンセプトは具体化途上にあるが、スマート・グリッドの中核は、従来の中央集権型サプライサイドの電力供給システムから、ディマンドサイドも統合したIT技術を用いたスマート・メーター (次世代電力量計) である。 スマート・メーターは、これまでの電力量計にパソコン機能を加え、光ファイバー等を利用した電力需給の双方向通信を行う電子機器である。 従来の送電線網に再生可能エネルギーを系統連携させて、IT技術を駆使して、電力の最適需給を達成し、省エネルギーによる地球環境保護を目指す革新的なデバイスといえる。 特に、2011年3月11日に起こった東日本大震災による電力供給不足、アジア諸国における急激な電力需要増加という状況において、電力の効率的な利用と電力需給の最適化を目指すスマート・メーターの重要性は一段と強まり、ガス需給、水需給も含めた、統合的なスーパー・スマート・メーターに進化している。 世界各地では、環境配慮型都市 (スマート・コミュニティー) の建設が始まっている。世界の電力量計は17億個に達し、既にその1割以上に相当する2億個はスマート・メーターとなっている。 米国においては、2013年に5,000万台に達し、日本も7,000万台の電力量計をスマート・メーターに切り替える計画が進められている。東京電力も2023年度までに管内の2,700万世帯すべての電力量計をスマート・メーターに切り替える計画である。スマート・メーターに関連する分野は極めて広く、従来の重電メーカー、電力企業に加えて、送電線メーカー、家電メーカー、スマート・ハウスに関連する建設業界、最先端のIT企業、膨大な通信データを処理するソリューション・ビジネス企業、ガス企業、水処理企業も含まれる。 世界のスマート・メーター市場は、年間2億個、金額にして2兆円を超える巨大市場が2020年には出現する。世界においては、スマート・メーターの普及が進み、スイスのランディス・ギア、米国のアイトロン、センサスの上位3社が世界シェアの5割を掌握し、日本企業も東芝、大崎電気等の大手4社が、M&A (合併・買収) を進め、世界展開をはかろうとしている。 こうしたスマート・メーターを巡る最新動向と今後の日本企業にとっての事業機会を第一人者が詳細に解説する。