電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 (全量買取法) でプロジェクトを行う上で懸案であった売電契約のモデル契約が資源エネルギー庁から2012年9月26日に公表された。売電契約書はキャッシュフローの源泉であり、プロジェクトを成功させる上で不可欠の契約である。 本講義では、売電契約のモデル契約を逐条で解説し、重要な論点について注意を喚起する。また、モデル契約には欠けている出力抑制に伴う補償の算定方法の具体的な記載方法や損害賠償の範囲に逸失利益が含まれるように記載することの必要性について言及する。 また、パブリックコメントに対する詳細な「考え方」 (928回答) の公表が6月18日になされ、またその後にも資源エネルギー庁のWeb上で重要な確認事項が公表されている。従来公表されていた仕組みから変更された部分も含まれる。今回公表された「考え方」の重要ポイントを確実に把握して、制度の全容を掴み、今後のビジネスに生かすことが不可欠と思われる。 すでに、日本国内において全量買取制度に基づく太陽光発電事業及び風力発電事業の準備が活発化してきている。電力会社との売電契約の交渉も始まっている。メガソーラー案件や風力発電案件の契約書作成も始まっている。具体的にプロジェクトを遂行するためには、土地賃貸借契約、売電契約、建設契約 (EPC) 、運営契約 (O&M) 、パネルや風車の調達契約と性能保証、保険契約、プロジェクトファイナンスの融資契約・担保契約などさまざまな契約書を作成・交渉しプロジェクトを組成していく必要がある。 また、事業を行う上では税法の観点も見逃すことはできない。小規模な案件では、不動産ファイナンスの考えを応用した匿名組合を利用するTK-GKストラクチャーや信託の仕組みなども検討する必要がある。太陽光発電の屋根貸しモデルなど新しい形態に対応した契約の作成も必要となる。 本講義では各契約作成の注意点を検討する。売電契約の交渉ポイントについても説明する。さらに資金調達方法としてプロジェクト・ファイナンスを考える場合の視点も織り込んでいく。