ますます過酷な環境下で使用されるエポキシ樹脂。そのような中、耐熱性、絶縁性、耐候性、難燃性、熱伝導性、柔軟性・可撓性、透明性、耐衝撃性、密着性、耐湿性など多くの複合的な機能性向上が求められています。
本セミナーでは、エポキシ樹脂の硬化メカニズムなど基礎技術から分子デザインの考え方、さらには各種硬化剤の選定や最適な配合ポイント、エポキシ樹脂の機能性を引き出す考え方・活かし方を学びます。
第1部 エポキシ樹脂の構造と硬化剤および硬化メカニズム
(2012年12月13日 10:30~12:00)
講師:
東京工業大学 大学院理工学研究科 化学工学専攻 教授 久保内 昌敏 氏
エポキシ樹脂は、成形性、接着性、電気絶縁性、機械的強度、・・・と様々な特徴を持ち、多くの分野で便利に用いられている。エポキシ樹脂の化学構造だけでなく、硬化剤をいろいろと選ぶことができるのと同時に、その種類によって物性も大きく変わり、適用されるアプリケーションによって選択されている。
本講では、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂に使われるさまざまな硬化剤の化学構造と、その硬化メカニズムの基礎を解説する。
- エポキシ樹脂とは
- ネットワークポリマー (熱硬化性樹脂)
- エポキシ樹脂硬化物の高分子構造
- エポキシ環の反応性とその特徴
- ビスフェノール型エポキシ樹脂の構造と特徴
- ノボラック型エポキシ樹脂の構造と特徴
- その他のエポキシ樹脂
- 主な硬化剤と硬化メカニズムの基礎
- エポキシ樹脂に用いられる硬化剤の種類
- エポキシ樹脂硬化剤と活性水素
- アミン系硬化剤との硬化反応
- 酸無水物系硬化剤との硬化反応
- 触媒型および潜在型硬化剤による硬化反応
- 化学構造の異なるエポキシ樹脂の特徴
- エポキシ樹脂の機械的特性
- 硬化剤の異なるエポキシ樹脂の硬化特性
- 硬化剤の異なるエポキシ樹脂の耐食性
第2部 エポキシ樹脂の機能性を上手く引き出す分子デザインの考え方
(2012年12月13日 12:45~14:15)
講師:
DIC (株) ポリマ第一技術本部 ポリマ技術5グループ 主任研究員 有田 和郎 氏
本講座においては電気電子材用向けエポキシ樹脂が必要とされる機能の一般的な向上技術の紹介とその課題を解説したうえで、それぞれ相反関係にある機能を両立する分子デザインとその合成技術について解説する。
基礎物性理論と硬化物データを関連付けながら、これら分子デザインを応用した最新の特殊エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤を紹介する。
- はじめに
- DICエポキシ事業の説明
- 代表的な既存エポキシ樹脂
- 各種電気電子材料の技術動向
- 半導体パッケージ
- 高周波基板
- パワー半導体デバイス
- エポキシ樹脂の分子構造と性状値の関係
- エポキシ樹脂の一般的な機能性向上技術の紹介とその課題
- 耐熱性の向上
- 吸湿性の向上
- 誘電特性の向上
- 難燃性の向上
- 柔軟性の向上
- 熱伝導性の向上
- 相反関係にある機能を両立する分子デザインとその合成技術
- 相反関係にある機能を両立する分子デザインを応用した最新の特殊エポキシ樹脂・エポキシ樹脂硬化剤の紹介
第3部 光塩基発生剤によるエポキシ樹脂のUV硬化
(2012年12月13日 14:30~16:00)
講師:
元 東邦大学 理学部 先進フォトポリマー研究部門 特任教授 市村 國宏 氏
ラジカルあるいはカチオン系UV硬化とは異なり、エポキシ樹脂のUV硬化は通常、光硬化と熱硬化からなるアニオン系デュアル型である。
その主たる狙いは熱硬化の低温化、迅速化にあるが、所的の目的に適した光塩基発生剤の選択が重要となる。
ここでは、光塩基発生剤を概観したうえで、代表的なエポキシ樹脂のデュアル型UV硬化を述べる。
- 序論
- デュアルUV硬化とハイブリッドUV硬化
- エポキシ樹脂のデュアルUV硬化の位置づけ
- 光塩基発生反応
- 光塩基発生反応の例
- 光塩基発生剤の分類とその応用
- 光塩基の反応性
- エポキシ樹脂のUV硬化例
- エポキシ樹脂のUV硬化
- エポキシ・チオール系のUV硬化
- エポキシ・アクリレート系のUV硬化
- 塩基増殖反応を含むエポキシ樹脂のUVデュアル硬化
- 塩基増殖反応
- 高分岐型塩基増殖剤とエポキシ樹脂のUV硬化
第4部 アミン系硬化剤の選定方法と最適配合
(2012年12月14日 10:30~12:00)
講師:
ナガセケムテックス (株) 電子・構造材料事業部 構造材料開発課 グループリーダー 谷岡 由男 氏
エポキシ樹脂に関係する営業、研究者、技術者及び製造部門の関係の方について、アミン系硬化剤の種類、特徴及び用途展開に於ける最適配合方法について、応用面を交えながら説明する。
- 用途別の硬化剤の使用例
- アミン硬化剤・酸無水物硬化剤の長所・短所
- アミン硬化剤の性質と性能
- アミン硬化剤の分類及び特徴
- 変性アミン
- 硬化促進剤
- ポリアミドアミン硬化剤の特徴
- エポキシ樹脂とアミン硬化剤の反応
- エポキシ樹脂に対するアミン硬化剤の配合割合
- 可使時間を左右する要因
- アミン硬化剤に与える湿気及び炭酸ガスの影響
- 用途別アミン硬化剤の分類
- アミン硬化剤による耐熱性・強靭性の向上
- エポキシ樹脂の芳香族アミン硬化剤特性
- 耐熱性タイプのアミン硬化剤
- アミン硬化剤による強靭性の向上
- 安全衛生
- おわりに
第5部 酸無水物系硬化剤の選定方法と最適配合
(2012年12月14日 12:45~14:15)
講師:
新日本理化 (株) 研究開発本部 技術開発部 副主席研究員 山中 正彦 氏
エポキシ樹脂硬化剤として使用される酸無水物の種類と特徴および配合比率や硬化条件の最適化について概要を説明し、硬化物性の改良に取り組んだ2、3の実例を紹介する。
- 酸無水物系エポキシ硬化剤の概要
- 酸無水物の使用方法
- 市販酸無水物の種類と特徴
- 透明性
- 高耐熱
- 耐候性
- 耐湿性改善
- 可撓性付与
- 難燃性付与
- 酸無水物を使いこなすポイント
- 機能を最大限に発揮させるために
- 酸無水物/エポキシ樹脂配合比率の最適化
- 吸湿による酸無水物の物性低下とその防止
- 安全衛生上の注意事項
酸無水物の選択とエポキシ硬化物性の改良例
- 耐熱性・耐湿性液状酸無水物
- エポキシ硬化物の耐熱性向上
- 薄膜硬化性と耐湿性の改善
- 無色透明用液状酸無水物
- エポキシ硬化物の耐熱黄変性、耐候性に及ぼす因子
- 透明性重視のエポキシ樹脂配合のポイント
- 粉体塗料用固形酸無水物
- 耐衝撃性・密着性の改善
- 貯蔵安定性の改良