本セミナーでは、主として有機EL事業参入を考えている企業の若い研究者に向けて、有機EL素子開発に必要な基本的事項についてわかりやすく述べる。 高効率な有機EL素子の開発を進めるには先ず、発光分子がもつ光物性を知る必要がある。有機分子がなぜそのような光学特性や電気的特性を示すに至ったかを知る必要がある。例えば、赤色発光する材料があれば、なぜそのような特定の波長の発光を示すのか?、なぜ緑色や青色の発光も観測されなかったのか?、なぜそのような量子効率や蛍光寿命の数値を示すのか?、などについて理解を深める必要がある。そのためにどのような実験的理論的研究が必要かを説明する。 素子開発に必要な量子力学的知識を含む基礎的事項や文献を読み解くテクニックについて述べるとともに、材料評価のための実験方法や解析方法を述べる。さらに、有機EL素子に電圧がかけられたとき、有機EL素子内で発光前、発光時、発光後に何が起こっているのかついて解説する。最後に、高効率化を目指す照明用白色有機EL素子開発の現状を筆者の研究を含めて紹介する。