地球温暖化ガスであるCO2を原料または有機溶媒代替とする利用技術は21世紀の新たなものづくり手法となりうるものとして注目されている。超臨界CO2は臨界条件が穏やかであるため、カフェインの抽出等にすでに工業的利用がなされているが、有機反応での利用は極めて少ない。
有機反応で超臨界CO2の機能をうまく利用すると、有機溶媒中の反応よりはるかに効率の良い結果がしばしば得られる。特に、固体のポリマーを超臨界CO2中で取り扱うと、その浸透性、溶解性の機能のために反応剤がポリマーの奥深く浸透し効率よく反応させることができる。
本講演では開発技術を中心に、有機反応における超臨界CO2の機能の利用方法について解説する。また、超臨界二酸化炭素を用いる反応装置の組み立て方や基本的な操作方など、超臨界二酸化炭素を用いた有機反応の実験方法についても解説する。
- 超臨界流体の利用
- はじめに
- 超臨界流体とは
- 超臨界流体の工業的利用例
- 超臨界流体を用いた最近の応用研究
- 分離、抽出、洗浄
- 材料製造技術
- 反応と環境技術
- 超臨界二酸化炭素を用いたCO2固定化反応
- CO2の水素化、付加反応、縮合反応
- ウレタン合成
- カーボネート合成
- カルボキシル化反応
- 超臨界二酸化炭素を媒体とした有機反応
- 酸化とC-C結合生成反応
- 置換反応
- 求核置換反応とポリイミド原料の合成
- 環境調和型エステル合成
- 重合
- 酵素反応、光反応、電気化学反応
- 超臨界二酸化炭素を媒体としたプラスチックのケミカルリサイクル
- ポリ乳酸のリサイクル
- ポリエチレンからジカルボン酸の合成
- ポリプロピレンから精密化学原料の合成
- 超臨界二酸化炭素を媒体とした架橋ポリエチレンの熱可塑化
- 二酸化窒素による架橋部の選択的酸化
- 過酸化水素による架橋部の選択的酸化
- 酸素による架橋部の選択的酸化
- 開発技術の展開
- 環境調和型アルデヒド合成
- 超臨界二酸化炭素中での安全性の高いオゾン酸化
- 超臨界二酸化炭素中での京大法ニトロ化
- 超臨界二酸化炭素中の反応で用いる簡易な実験装置
- 圧力容器と部品と実験操作法
- 連続反応装置の構成と組み立て
- 簡易溶解度測定法
- 今後の展望