2022年のウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰とエネルギー安全保障の重視、2025年のトランプ政権誕生による脱炭素政策の見直しにより、従来は地球温暖化の元凶とされてきた石炭火力発電への世界的な重要性が強まっている。特に、AI (人工知能) の技術革新、データ・センターの新設により電力需要の増加が見込まれ、世界のデータ・センターの電力需要は2030年に2024年比3倍になると、IEA (国際エネルギー機関) は予測している。アジア、アフリカをはじめとした途上国も、人口増加とライフ・スタイルの向上により電力需要が増加する。こうした電力需要の増加には、太陽光発電、風力発電をはじめとした再生可能エネルギーだけでは力不足であり、出力が安定し、発電コストが安価な石炭火力発電の維持と増強が必須となる。世界の石炭火力発電を取り巻く現実をみると、2024年における世界の石炭消費量は87億9,000万トンと過去最高を更新し、中国の石炭消費量は前年比1.4%増、インドの石炭消費量は前年比3.7%増と大幅に増加している。欧米先進国の石炭火力発電については、減少が続いているものの、それを上回るペースで、電力需要の伸びが著しいアジア諸国の石炭火力発電の増加が続いている。こうした動きに拍車をかけるように、トランプ大統領は、石炭火力発電への規制を見直し、重要な電源に位置づけている。 今後も、猛暑による干ばつ等による水不足のために、水力発電の発電量が低下し、石炭火力発電が電力不足を補う構図が続く。発電用の一般炭価格は、2023年春には、欧州の天然ガス価格の低下を受けて低迷したものの、中国による豪州の一般炭の輸入増加により、2024年には1トン当たり140ドル台に上昇した。粗鋼生産用の原料炭価格も、インドの粗鋼生産が増加しており、中国が石炭の国内生産を拡大しているものの、堅調に動いている。中国は、脱炭素政策をとりつつも、石炭火力発電の新設を行っており、今後も石炭火力発電は増加する。インドネシアをはじめとしたアジア諸国も、石炭火力発電は重要な電源となっている。2023年に開催されたCOP28 (第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議) においては、温室効果ガス排出削減対策をとっていない石炭火力発電の段階的な削減 (Phase Down) を明記したものの、廃止 (Phase Out) という表現にまでは踏み込んでいない。2025年のCOP30も、化石燃料廃止のロード・マップの制定は、現実論として先送りされた。世界の電力需要29兆キロワット時における36%を石炭火力発電が支えている現実があり、石炭は、2026年以降も重要なエネルギーとなっている。寡占化する石炭プレーヤーと堅調な石炭需要によって、石炭価格は上昇することが見込まれているとしても、石油、天然ガスと比較して圧倒的に割安であり、2026年冬が厳冬となった場合には、一般炭価格は1トン当たり200ドルを超える可能性も考えられる。脱炭素政策とエネルギーの安定供給とエネルギー・コストの低下の同時達成を実現する観点のもと、2026年春以降の石炭価格はどうなるのか。日本のUSC (超超臨界圧石炭火力発電) 、IGCC (石炭ガス化複合発電) をはじめとした高効率な石炭火力発電と、石炭火力発電へのアンモニアの混焼による炭酸ガス排出削減の可能性。長期的なアジアにおける石炭産業、トランプ政権の石炭産業重視等、石炭火力発電事業に係わる日本企業にとっての事業戦略について、分かりやすく解説する。
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