高分子架橋反応は高分子を利用する成形品 (プラスチック、ゴム弾性体) 、フイルム、塗料、接着剤など製品の力学物性、耐熱性、耐溶剤性、あるいは密着性などの向上に役立つことから実用的には広く利用されている。しかし、大学の講義では時間の関係ここまで履修することはできない。同様に、高分子分解反応はこれまで高分子材料の劣化の観点から重要であるが、最近ではポリマーのリサイクルあるは生分解性高分子などの実用的な立場で検討されている。
しかし、最近では架橋と分解を可逆的に行わせる高分子材料も開発されており、架橋と分解反応を積極的に利用しようとする段階にきている。
本講では高分子の基礎物性を理解する立場から架橋および分解の基礎反応を解説するとともに、架橋と分解基礎反応が応用面でどのように活用されているについて紹介する。さらに、光酸・塩基発生剤、フォトレジスト、UV硬化、ナノインプリント、自己修復材料、リワーク型高分子など、現在、話題となっているテーマについても原理と実用性について紹介する。
- はじめに 高分子架橋および分解反応の意義
- 高分子の基礎物性
- 高分子の分子量と物性の発現
- 高分子の分子間力と物性
- 結晶性高分子と無定形高分子 (融点およびガラス転移温度)
- 架橋と高分子物性
- 高分子の基礎物性とその応用 (繊維、プラスチック、ゴム弾性体、塗料、フイルム)
- 熱架橋・熱分解反応の基礎
- 熱架橋反応
- イソシアナート基
- エポキシ基
- 二重結合
- アミノ基
- ケイ素化合物 (シラノール基、アルコキシシリル基など)
- 水系および粉体系架橋反応
- 熱分解反応
- 高分子の構造と熱分解
- 熱酸化分解
- プラスチックリサイクルと生分解性プラスチック
- 可逆的架橋・分解反応:自己修復型高分子
- 有機光化学の基礎
- 光の特徴と光源
- 光の吸収と量子収率
- 基底状態と励起状態
- 蛍光とりん光
- ケトンの光反応
- エネルギー移動
- 光架橋・分解反応の基礎と応用
- 光架橋・分解反応の基礎
- 光架橋・分解反応の応用:フォトレジスト
- UV硬化 (表面加工技術、ナノインプリント)
- リワーク型ポリマー
- おわりに:これからの架橋と分解反応