日本語には「焼きを入れる」とか「焼きが回る」とかいった熱処理に由来する言葉や「メッキが剥げる」といった表面処理膜を反映した言葉があります。古くから熱処理や表面処理は一般にも身近な技術でした。村々の鍛冶屋は熱した鉄を叩いて鍬などの農機具や日本刀の形状を造るとともに高温に加熱し、水で急冷して硬く、しかも折れにくい特性を造りこんでいました。秘伝であった匠の技は今では科学的に理解され装置化されることでだれでも高性能な製品を造れるようになっています。
近年、自動車部品など高強度と高靭性を兼ね備えた軽量部品が強く望まれています。しかもこれらを低コストで製造することが必要で、既存の安い鉄鋼材料を活用することが求められています。それには鉄鋼材料の組織を各部品の要求特性に応じて造りこむことが重要ですが、熱処理の良否によってその特性が大きく違ってきます。この講座では、鉄鋼材料の熱処理と組織の関係、ひいては機械的特性との関係を学びます。また表面処理方法についても概説して、その活用方法や注意点を述べます。部品の設計や金型の寿命向上に取り組む技術者が、鉄鋼材料の選択や熱処理の知識によって鉄を使いこなし、合理的な設計や生産、改善ができるようになることを本講座の目標とします。
- はじめに
- 鉄鋼材料とは
- 鉄鋼の製造工程
- 鉄鋼材料の分類
- 自動車の構造部品に用いられる鋼材
- 自動車部品にみる熱処理、表面処理
- 熱処理のいろいろ
- 熱処理とは
- 焼なまし
- 焼ならし
- 焼入れ
- サブゼロ処理
- 焼戻しと時効処理
- 熱処理に伴う金属組織の変化と機械的特性
- 金属の微細構造と機械的性質
- 炭素鋼の標準組織
- 冷却速度による組織変化
- 焼入れ組織、マルテンサイト
- 熱処理特性に及ぼす合金元素の影響
- 焼戻しに伴う組織変化
- 熱処理操作に伴い現れる現象
- 結晶粒の変化
- 酸化、脱炭
- 熱処理応力と熱処理変形
- 熱処理の実際
- 鋼種ごとの熱処理のポイント
- 構造用鋼の焼入れ性
- 軸受鋼の球状化処理
- ばね鋼のパテンチング
- 工具鋼の焼入れ温度
- ステンレス鋼の焼戻し温度
- マルエージング鋼の時効処理
- 表面処理のいろいろ
- 表面改質と表面被覆
- 表面硬化処理
- 浸炭、窒化、浸ボロン
- 溶射、肉盛
- めっき、表面処理鋼板
- セラミックコーティング
- 表面処理による特性向上と金型への適用
- トライボロジー特性
- 耐熱性
- 各種成形金型への適用事例
- 適用時の留意事項
- 金型寿命の向上
- 寿命向上の考え方
- 寿命要因の見極め
- 評価試験の活かし方
- まとめ
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