熟練技術者の頭や身体の中に蓄積されてきた暗黙知 (経験に基づくカン、コツ、ノウハウ) を、「認知的タスク分析 (CTA, Cognitive Task Analysis) 」という手法を使って引き出し、「タスク分析表」に整理することで、熟練技術者の暗黙知を承継・共有できるようにする具体的手法をお伝えします。理論的裏付けから具体的手法まで、少し学んで経験すれば現場で使えそうなレベルのお話をします。
「暗黙知」とは、人が経験を通じて体得した、言葉では伝えられない (伝えにくい) 知識や知恵のことです。人は経験を通じて有益な知識・知恵を創造し、蓄積します。また、その知識・知恵を実践するスキルを身につけます。その知識・知恵は、状況認識や意思決定の機会が多く、且つその如何によって成果が大きく変わる仕事ほど、高い価値を持ちます。自社で「タスク分析表」を作れるようになれば、熟練技術者の技術・技能の継承や、日常的な業務の引継、新人教育の効率化などが実現可能です。
暗黙知を見える化するには、熟練技術者に対するインタビューがすごく重要なことは言うまでもありませんが、特に場面毎にインタビュアーが発する質問の中身が重要です。例えば、
「その事例で次に進むべき方向を決められた時、あなたにそのような意思決定をさせたのは何でしょうか?」「その時、問題となっていた事項からいったい何を見つけたのですか?そして何を無視したのですか?」「そのようにされた理由は何でしょうか?」「それは、あなただから気づけたのでしょうか?それとも、他の人でもある程度の知識や経験があれば、気づけたと思われますか?」「今のお話からすると、初心者だったら同じようにするのはまず無理だと思いますね。では、どのような知識や経験があれば、あなたと同じようにできるようになると思われますか?」
このように、場面に応じて的確な質問をして、熟練技術者が日常的に行っている状況認識の手法を聞き出し、さらに、その結果に基づく意思決定の手法とその理由を聞き出すことが極めて重要です。そこに暗黙知が含まれているからですね。
本講座では、日本を代表する企業を始め、多くの中小企業やベンチャー企業に対し、暗黙知の塊と言える弁理士業務を30年やってきた弁理士が、そこから得た知識と経験とスキルを活かして、熟練技術者の持つ暗黙知を見える化する手法をお伝えします。
- はじめに
- 2007年 (技能伝承) 問題
- ナレッジマネジメントの失敗
- 熟練技術者が持つ「技術・技能」の喪失
- 伝承の成功要件
- 企業側の事情
- 本セミナーの目的
- 本セミナーの手法の特徴
- 暗黙知とは何か
- 技術と技能
- 知識と知恵
- 暗黙知と形式知
- 暗黙知の階層
- 暗黙知の種類
- 重要な暗黙知
- 「暗黙知見える化」を弁理士が始めた経緯
- エンジニアから特許の世界へ
- 特許明細書作成という仕事で培われた3つのスキル
- 3つのスキルの暗黙知見える化への転用
- 「暗黙知見える化」の内容
- 「暗黙知見える化」の全体像
- 「暗黙知見える化」のための手段
- 「暗黙知見える化」の行動フロー
- 暗黙知見える化の対象となるタスク (仕事・作業) の選定
- 選定されたタスク (選定タスク) を実行する熟練者の選定
- 選定された熟練者 (選定熟練者) の選定タスクに関する情報の入手
- 選定熟練者との予備的打ち合わせ
- 選定熟練者によるタスク分析表の記入 (自問自答による)
- 選定熟練者に対するインタビューの実行
- 選定熟練者に対する補足的な質疑応答
- タスク分析表の完成
- タスク分析表の検証
- タスク分析表に基づく教材の作成
- 教材を利用した選定タスクの実践・教材の更新
- 「暗黙知見える化」の効果
- 熟練者の形式知と暗黙知が明示された独習用教材を作製できる
- 教えるスキルがない・教わるべきことが分からないという事態に対処できる
- 小規模で試験的に実施してみて本格実施の適否を判断できる
- 「暗黙知見える化」の実際例
- インタビューの実施例 (発明者面談)
- タスク分析表の記入例 (発明者面談)
- タスク分析表以外の情報整理形式の具体例 (発明者面談)
- 教材の具体例 (発明者面談)
- 機械設計の場合=タスク分析表・フローチャート・質問の具体例
- まとめ
- 講義の要点整理
- 社内で実施する際の注意点と対処法
- 簡単な事例紹介
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