今、核融合 (フュージョン) への投資が世界中で過熱している。世界的な各地での紛争によるエネルギー危機の緊迫感と地球環境のグリーン化の世界的なうねりの中で革新的なエネルギー源になりうるか?が問われている。政府が主導する主流の核融合方式、トカマク型の原型炉は2045年頃までに建設され、発電実証がなされる計画であるが、カーボンニュートラルには間に合わない。そのため、ゲームチェンジャーになりうる革新的核融合方式の核融合スタートアップ企業に大きな期待が寄せられ、今日のフュージョンフィーバーを生み出した。それらの多くは2030年半ばには経済的な商用炉を実現することをミッションに掲げている。
海外での核融合企業への民間投資が約9000臆円にも上り,商用炉開発に向けた国際競争の激化が今後予想されている。日本では2023年4月、国内の統合イノベーション戦略推進会議でフュージョンエネルギーのイノベーション戦略が新た策定され,その産業化と研究開発の推進体制を早期に構築し,フュージョン技術の産業育成を行う事業が実施されている。この研究開発で創出される技術は宇宙開発、高温超電導、モビリティ電動化および高耐熱材料試験など他分野への応用が期待されている。
本講演では、核融合エネルギー開発の現状、および原型炉に向けた技術課題点を示し、世界で40社以上にも増えつつある民間企業の開発状況、特に、筆者が長年研究を行ってきた革新的核融合方式の核融合発電に焦点を当て、それに挑戦する民間企業の爆発的イノベーション技術とは何か?また、その実現に向けた課題は何か? また、そのイノベーション技術と産業化について分かり易く紹介する。
- 核融合 (フュージョン) エネルギーとは何か?
- 脱炭素化時代の核融合エネルギー開発と国際協力
- なぜ、核融合発電の実現に時間がかかるのか?
- 核融合発電のしくみ
- 原子力 (分裂炉) 発電とどう違うのか?
- 核融合開発はどこまで進んでいるのか?
- 核融合反応を起こす高温プラズマとは何か?
- 高温高密度のプラズマを磁場で閉じ込める方法とは?
- 核融合スタートアップ企業への過熱する投資と支援
- 今なぜ核融合発電が注目されているのか?
- 核融合スタートアップへの巨額の民間投資と波及効果
- 核融合スタートアップを支援する組織と活動状況
- 経済的でコンパクトな核融合炉に向けた技術課題と革新的アプローチ
- イーター国際協力で進展するトカマク型核融合炉の技術課題とは何か?
- 装置中心に構造物のないコンパクトなプラズマ閉じ込め方式の利点
- 磁化ターゲット核融合への新しいアプローチ
- 高温超電導強磁場コイルの開発と現状
- 中性子フリーの魅力的な核融合反応の利用と新しいエネルギー回収法
- 核融合スタートアップ企業のイノベーション技術
- 常温超電導コイルを用いた強磁場化技術によるトカマク炉の小型化
- Commonwealth Fusion Systems (米国)
- Tokamak Energy (英国)
- 中性粒子ビーム入射でコンパクト・トーラスプラズマ (FRC) の加熱と定常化技術
- Tri Alpha Energy Technologies (米国) – (革新的方式)
- 二つのコンパクトな磁化プラズモイドの加速、衝突合体と急速磁気圧縮で高密度化・高温化と誘導型エネルギー回収技術
- 磁化プラズマガンと圧縮ガス駆動ピストンを用いたコンパクト・トーラスプラズマの衝突合体圧縮技術
- 磁場コイルを用いない究極の小型商用炉を目指したシアフロー安定化Zピンチ
- 循環する液体金属用いた遮蔽、エネルギー回収と燃料増殖の炉工学技術
- General Fusion (カナダ)
- Zap Energy (米国)
- First Light Fusion 社 (英国)
- フュージョン・イノベーション技術の産業化
- 高温超電導巻線
- 強磁場生成コイル
- 超電導MRI
- 電動化航空機モータ 他
- 高電圧大電流パルスパワー技術 (超高パワープラズマガン装置)
- 高パワーイオンビーム
- 磁化プラズモイド繰り返し噴射による革新的宇宙推進機
- リチウム回収技術、金属精製技術
- まとめと今後の課題
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