原薬、中間体、化学品のスケールアップ製造は開発過程では絶対に避けられない部分である。開発初期では合成プロセス、出発原料の変更のような大幅な変更も可能であるが、開発が進みプロセスバリデーションを行った後、例えばMF登録した後の変更は難しくなる。特に、申請後の商用生産で設定したパラメータの不足、不都合部分が明らかになるとその対応が難しく、絶対に避けたい部分である。
本セミナーでは実際に経験した事例 (失敗例) を参考に各開発段階から承認取得後の商用生産で遭遇した問題点をどのように対処、解決したかを説明する。そこから得られた知見をもとにその後プロセス開発に役立つ実験計画法を種々工夫した。実験計画の立て方、必要なデータの集め方についてもあわせて紹介する。
- 医薬品 (原薬) の開発とスケールアップ (基本的な考え方)
- スケールとスケールアップの相違点
- 小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法
- 合成法、合成ルートの設定、考え方、注意点
- ICH M7
- 化学物質審査規制法 (化審法)
- その他
- スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方と
- 原料、中間体の評価項目 (安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他) とその対応策
- スケールアップでの問題点 (実際の経験から) と対応策
- 開発初期 (実験室〜20Lスケール) の事例
- 転位反応:
- 1gから10gにスケールアップしたら転位反応が原因で目的物が得られなくなった。 (反応機構の理解)
- アスコルビン酸硫酸エステル誘導体の製造:
- 1gスケールでは目的物が合成できたが、10gスケールでは合成不可の結果となった。 (中間体の安定性)
- カラム分離工程の回避:
- 前臨床試験に進むことが決まり、カラム分離工程回避の必要性が出てきた。 (結晶性誘導体)
- ピリジン・無水硫酸錯体 (硫酸エステル化剤) の合成:
- 吸湿性が原因で目的物が得られないと判断したが、逆に吸湿性を利用することで大量生産可能な方法を見出した。 (目的物の物性の理解)
- ペントキシフィリン中間体の製法検討:
- 文献を参考に実験を進めたが目的物は得られず、実験結果に基づいて検討を進めたところ、簡単な製法にたどり着いた。 (反応の理解)
- 抗生物質の側鎖の製造:
- 新合成法を考案し、特許出願までしたが、中間体に安全性の問題あることがわかり、検討中止。 (安定性は変えられない)
- 五塩化リンによるクロル化プロセス:
- 溶媒を変更したら反応が進まなくなった。 (結晶多形の影響?)
- アルキルホルムイミデート類の合成:
- 青酸ガスを使用しなければならない。 (反応の理解)
- エステルの選択 (アミノチアゾール誘導体) :
- メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして相違点 (物性) を確認、合理的な合成法に至った。
- その他
- パイロット試作 (100〜500Lスケール) での事例
- ジクロルアセトニトリルの製造:
- 設備の性能を安易に考えて刺激性のミストが噴出した。(反応の理解)
- アミノチアジアゾール誘導体の製造:
- 設備の性能を安易に考えてオーバー反応してしまった。 (反応後の安定性確認)
- 塩酸ペンタゾシンの中間体の製造:
- スケールアップして中間体を大量合成したら分解してしまった。 (中間体の物性は変えられない)
- アミノチアゾール酢酸誘導体の製造:
- 再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。 (必ず原因がある)
- 臭素化プロセスのスケールアップ:
- パイロットにスケールアップしたところ、反応開始を確認できず、大きなトラブルに陥りそうになった。
対処法を検討した結果、合理的かつ安全なプロセス開発に至った。
- 撹拌速度の影響:
- アセトン/炭酸カリウム系でのアルキル化反応。 (不均一反応の考え方)
- 結晶多形の同等性:
- 外部委託したら結晶形で同等性の問題が発生。 (規格設定の重要性)
- その他
- パイロットから商用生産 (2000Lスケール以上) での事例
- 微量の添加剤の影響:
- 2工程先の抽出・分液工程で問題 (エマルジョン) 発生。 (微量の添加剤の影響、原料のロット管理)
- Phase3試験後の製法変更:
- 爆発性の中間体を経由するためスケールアップ製造できず、Phase3試験が終わってしまった。 (反応の仕組みの理解)
- 目標規格の原料が手に入らない:
- 商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。 (原料調査の重要性)
- 設備変更して反応の本来の姿がわかった:
- パイロットまでGL、商用生産でSUSに切り替えたところ錆が発生。 (原料中の強熱残分の影響)
- アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ:
- パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。 (安定型と準安定型)
- キャンペーン生産:
- スポット生産では問題なかったエステル交換反応を、キャンペーン生産に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。 (種晶の影響)
- 溶媒回収できる条件でプロセスを設計:
- 溶媒回収しないと採算が合わなくなった。 (発想の転換)
- 残留溶媒の規格:
- 商用生産に移行しようとしたら残留溶媒の問題発生。 (溶媒和物)
- 出発原料の製法に伴う問題 (製法に伴う異性体混入の可能性)
- 商用生産開始後の事例 (数千Lスケール)
- 収量低下の逸脱:
- 技術移転:
- 原料の純度をアップ:
- 高純度の原料に切り替えた途端に逸脱 (不純物除去の仕組み)
- 乾燥時間の管理:
- 順調に商用生産がスタートしたが、突然製品の乾燥時間が2倍 (10時間→20時間) になった。 (水和物の考え方)
- 最終精製工程のスケールアップと注意点
- 精製溶媒の選択の重要性
- 溶解、晶析プロセスで異性化
- 歩留まりへの影響 (マレイン酸塩化のプロセス)
- 乾燥工程への影響 (水和物副生の影響)
- 難溶性原薬、中間体の精製
- 貧溶媒を加えて晶析
- 精製工程で水を使用する場合
- 原薬の乾燥プロセスで新たな残留溶媒が副生!
- 空気 (酸素、水分) の影響
- 溶解、脱色濾過、晶析中に過酸化物が副生
- 固液分離〜乾燥過程で結晶形が変化
- 微量に副生した溶媒和物の影響)
- 環境の影響
- 遠心分離機の脱水袋、
- 異物混入の瞬間
- フィルターの材質
- 包材 (一次包材、二次包材) の影響
- 包材中の微量の添加物の影響 (オキソン酸カリウム)
- 包材の品質 (結束帯の例)
- 粉砕機器の管理
- まとめ
- スケールアップを前提とした実験計画の考え方
- スケールアップ前提の実験計画の考え方、データの取得法、活用法 (事例を参考に)
- 事例1:プロセスの短縮 (7日近くかかるプロセス (反応→抽出→濃縮→晶析→乾燥) を2日に短縮。)
- 事例2:過酸化水素水による酸化反応 (危険性回避)
- その他、質疑応答
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