近年、IoTやDXの導入が産業分野にも進んできて、システム制御対象から連続的な時系列データが比較的容易に収集できるようになりました。しかし、蓄積された時系列データからシステム制御のための動特性を実用レベルでモデル化するのは一定の知識とノウハウが必要です。
本セミナーでは、時系列データからの制御モデルを構築する技法として、定番の伝達関数や重回帰法やAR自己回帰、および高度な時系列ニューラルネットや状態空間表現の基礎原理を分かりやすく解説します。またそれぞれの技法について、講師が実践した実例を示してどのモデルがどのような対象に適しているかを説明します。
モデリング技法を学んでも、現実の実践に立ちはだかるのは現場データの質と量です。講師のメーカ勤務と大学教員数十年の経験から、現場におけるロバストな時系列データ収集システム構築、収集した不完全な時系列データの調整・補正方法について実践的ノウハウを示します。
最後に、最近話題となっている生成AIの基盤技術であるTransformerという時系列ニューラルネットについて制御分野への応用研究を展望します。
- はじめに
- 時系列データと制御の相性
- 制御の本質は動特性なので対象データ収集は時系列が必須
- シミュレーションとモデルベース制御
- 時系列データからのモデル構築を制御システム開発にどう活かすか
- 時系列データから伝達関数
- 時系列データ変化から伝達関数の作り方
- 時系列データからデータ変化点抽出の実際
- 急変点抽出カットアウト法とDNA解析由来Breakpoint法の紹介
- 重回帰モデリング
- 重回帰モデルの基礎
- 連続時系列データから定常区間を切り出してモデル化する実務手順
- 実例1:設備消費電力重回帰モデル
- 多数の時系列データ群からの効きが良い説明変数を選択するコツ
- 自己回帰ARモデリング
- 自己回帰ARモデルの基礎
- 時系列データから次ステップを予測するモデリングの定番を紹介
- 実例2:設備電力抑制指令応答ARモデル
- 電力抑制指令5分後のステップ応答を予測するARモデルの構築・評価例
- 時系列データから状態空間モデリング
- ARモデル経由の状態空間表現
- 通常は難しい現代制御用モデルを時系列データから簡易導出する方法
- 実例3:設備電力最適制御
- 時系列データからの状態空間モデルを用いた評価関数最適制御の例
- 時系列ニューラルネット応答モデリング
- AIにより複雑な特性をモデル化
- 通常深層型と時系列専用LSTM型ニューラルネットの仕組み紹介
- 実例4:設備保全運転の発生予測
- 定常状態から突如起こる時系列事象を予知するという非常に困難な例
- 稀な突発事象予測の評価手法
- 通常の予測精度評価法ではなくTheat Score法による実戦的評価
- 時系列データ収集ノウハウ
- 時系列データ収集システム構築
- 時系列データ収集専用IoT通信システム「IEEE1888」紹介
- 時系列データ収集モジュレーション法
- 通常運用状態を維持しつつステップ応答指令実験を埋め込む方法
- 時系列データ補正SMOTE法
- なかなか実測できない時系列パターンを人工的に増強する手法
- 生成AIと時系列データ
- 生成AIの技術基盤Transformer
- ChatGPTの内部にある最先端時系列ニューラルネット紹介
- Transformerの時系列制御への応用研究動向
- 自然言語の時系列から産業監視制御の時系列へと応用研究
- Transformerによる産業応用の研究例
- まとめ