希少疾患は、少ない患者数による臨床試験の困難さに加え、近年では海外での治療薬開発が先行する、ドラッグラグ/ロス問題が顕在化している。そういった背景から、近年では規制要件の緩和が進められており、製薬会社にとっての希少疾患開発のインセンティブ改善に加えて、外国臨床データの外挿戦略やリアルワールドデータ (RWD) の積極活用が注目されている。
RWDの活用は米国が先行しており、日本でも規制整備が進んでいる。一方、RWDは全てのケースに活用できるわけではなく、かつ取り扱いは従来の臨床試験とは異なるノウハウと専門性が必要である。ただし、重篤な希少疾患ではプラセボ対照試験が困難なケースもあり、RWDの活用機会を逃さないことが重要である。また、RWDのビッグデータとしての側面から、AIなどの最新技術を組み合わせることで、合成対照群、長期疾患進行や治療効果予測に活用できる可能性がある。
さらに、新型コロナウイルスにより製薬業界でのオンライン・デジタル化は加速した。在宅の分散型臨床試験 (DCT) が注目され、デジタル技術革新により、疾患の程度や治療効果を可視化できるデジタルバイオマーカーの実装も進んでいる。これらのアプローチにより、希少疾患の開発促進に活用できる可能性がある。
本セミナーでは、希少疾患開発の最新薬事規制を概観しつつ、RWDの種類やその特性を概説しつつ、希少疾患開発への活用アプローチを、実例や注意点とともに解説する。また、次世代のRWD活用、DCTやAIなどを組み合わせたDigital Twinなどの活用可能性などの将来展望にも触れる予定である。
- 希少疾患開発に関連した最新薬事規制
- 希少疾病用医薬品 (オーファンドラッグ) 等指定制度
- 外国臨床データの受け入れ (日本人第I相試験、患者対象試験)
- 優先審査、条件付き指定制度など
- 希少疾患での臨床開発におけるリアルワールドデータ (RWD) の活用最前線
- 製薬会社が活用できるリアルワールドデータ (RWD) とは
- RWDの定義、種類とその特徴 (ランダム化比較試験との違い)
- 製薬企業によるRWD活用トレンド
- RWD活用の関連規制
- リアルワールドデータ活用の現在地
- 臨床開発へのRWDを活用する際のコンセプト
- 国内外の、RWDの臨床開発活用に関する関連規制
- 薬事承認申請への、国内外での活用事例
- DCT (Decentralized Clinical Trial) の概要と活用可能性
- リモートモニタリング、eConsent, eSource, 治験薬配送など
- がん領域での活用事例
- ウェアラブルデータなどのデジタルバイオマーカーの活用可能性
- 今後の展望と課題
- 欧米と日本での、RWDの将来への適用範囲拡大の方向性
- 製薬企業がレジストリへアクセスする際の、ポイントと現状の課題
- 実装段階にある、リアルワールドデータ×AIによるデジタルツイン
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