第4次産業革命と言われる現代は、人工頭脳 (AI) 、IoTやDX技術などの発達で、「モノをどう作るか」のキャッチアップの時代から「何を造るか (創るか) 」のフロントランナーの時代へと大きなパラダイムシフトに突入しています。社会や企業などは、想像力や対人力が豊かで、イノベーションを牽引する積極的な若手企業人材に大きな期待を持っています。その一方で、若手人材に対する企業などの評価として、「指示したことはしっかり実行するが、新たな提案やイノベーションに関わる提言はあまり出てこない」と言った声もよく聞かれます。 このような社会変化のもとで、高等教育機関における教育も教員指導の「教える教育」から学生主体の「自ら学ぶ教育」への転換が、アクティブラーニングなどを通じて行われつつあります。特に、昨今の新型コロナウイルス禍などを契機として、社会における仕事もテレワークなどの普及で、メンバーシップ型雇用形態から、各自が自発的に能力を示して仕事の計画や実施を積極的に行う方向への転換 (ジョブ型) が進んでいる状況にあります。このような変動性・不確実性・複雑性・曖昧性 (VUCA:ブーカ) の時代には、多様な価値観を持つ多彩な人材を適材適所で活用する必要に迫られています。 本セミナーシリーズは、若手企業人材が高等教育機関で習得した基礎・応用知識などを如何にして知恵に変えるかという「思考力」や、知恵を実践するために必要な「対人力」、「組織で働く力」といった、仕事の遂行に必要な能力の飛躍的伸長を目的としたものであり、若手企業人材の今後のさらなる活躍に向けて企業等の人材育成・教育の一環として体系的に実施するものであります。
企業などの若手人材の仕事遂行に必要な基礎知識の習得から実践活動の具体化に関連する3部構成です。それぞれの部は、80枚程度のパワーポイントなどを利用して、オンライン方式で実施します。座学だけでなく、例題や演習の実施も含まれており、講義内容の理解を深めるように工夫されています。
(1日目: 2024年10月15日 10:30〜16:30)
第1部の前半では、若手人材が高等教育で培ってきた経験を振り返り、その上で、実社会においてはどのような能力が求められるのかについて理解していただくための解説を行います。 具体的な目標として、現在高等教育において実施されているアクティブラーニング (自ら学ぶ) の事例を元に、実社会が求める3つの社会人基礎力としての「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の理解や習得を促します。これを通じて、若手人材各自の思考力や実践力に対する視座の向上や視野拡大への展開を目指します。 後半では、仕事水準の向上に向けた脳機能の理解と活用について解説します。記憶や思考のメカニズムを理解し、その向上に向けた具体的な方法について述べます。睡眠の重要性、やる気スイッチの見つけ方、認知機能と閃きを高める方法、「疲れない脳」を育てる方法など、仕事能力向上に向けての展開方法についても解説します。 また、人間は記憶を“忘れる”生き物であり、それが仕事に影響することがあります。この脳の記憶忘却のメカニズムを認識し、メモ・ノートを活用することで仕事の効率化を図ることができます。講座ではメモ・ノートの取り方の基礎技術やその実践、活用方法についても言及いたします。
〜ロジカルシンキング/ライティング、データベースドシンキング、クリティカルシンキングの理解と活用のための進め方〜
(2日目: 2024年10月22日 10:30〜16:30)
第2部の前半では、仕事に必要な基盤技術として挙げられる論理的思考 (ロジカルシンキング) について基本から解説し、その本質を理解していただくことを目指します。ロジックツリー、ピラミッドストラクチャー、MECE (Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive) などの基本構造、因果関係の三原則や論理的思考技術の実践方法についても解説します。 次に論理的文章力 (ロジカルライティング) の重要性とその基礎についても触れ、正確な情報伝達を目指すための10原則や具体的な文書力向上の方法を解説します。 さらにデータに基づいた思考力 (データベースドシンキング) の基礎を解説し、その実践のための三つのステップや、演習を通じた具体的な思考例を紹介、情報を効果的に整理し、洞察力を高める方法を学びます。 後半では、論理的思考の基本理解のもとに、その訓練方法や仕事の中での活用方法、さらに創造的思考 (クリティカルシンキング) への展開について解説します。クリエイティブ思考とクリティカル思考の関係性や、論理的思考から創造的思考への移行方法について詳しく掘り下げます。創造的思考の具体的な進め方については事例紹介や演習を行い理解を促します。
(3日目: 2024年10月29日 10:30〜16:30)
第3部の前半では、良好な人間関係の構築、確実なコミュニケーション、チーム組織の円滑な活動等に重要な「対人力」の向上を目的とした解説を行います。対人力の重要性はイメージしやすいものの、その能力向上に向けてどのような意識付け・取り組みを行えば良いかは具体的であるとは言えません。そこでまず、「コミュニケーションは発信者の意図ではなく、受け手が決める」という原則に基づいて、聴くことと観察することであるインプット系コミュニケーションの能力向上と、自身の考えや意図を上手に伝えるアウトプット系コミュニケーション能力の鍛え方などについて解説します。 次にチームを生かす対人力や、チームの活性化、メンバーの意欲を高める会議進行運営者 (ファシリテーター) スキルの向上法について解説し、チーム組織におけるコミュニケーションのあり方を考えます。最後に、対人情報の把握やその根拠の理解、自己発信情報の認識、ライフポジションや心の四つの窓といった心理学のフレームワークを紹介し、自己理解や対人関係構築にどのように役立てられるのかを解説します。 後半では、3日間セミナーの締めくくりとして、「問題・課題の解決能力向上」をテーマに講義を行います。実際の仕事では問題や課題に対処し解決していくことの連続です。自身やチーム・組織が抱える問題・課題に気が付き、分析し、解決策を策定、実行していく力は業務の改善や成果に直結する重要な仕事能力です。 そこで、問題・課題解決の基本的ステップを説明し、複雑な因果関係の理解から測定可能な要因とそうでない要因の区別、そして問題解決の明確化と構造化など具体的な考え方を解説します。ポジショニングマップやTOWS分析を通じて戦略的アイデアを生み出す方法や、テレワークに最適化された作業環境の構築方法などの実施例、GRIT (やり抜く力) の重要性と新たなアイデアの創出手法、問題・課題解決に必要な思考ツール等について紹介し、問題・課題解決能力の向上に繋げて頂くことを目指します。
教員、学生および医療従事者はアカデミー割引価格にて受講いただけます。