粘着力の決定には、粘着剤の表面張力や粘弾性といった物性だけでなく、粘着剤の変形による形態形成、装置の剛性といった、動力学的要因も重要である。
実際、同じ粘着テープでも、どのような速さで剥離するか、また、テープの貼られている系の固さ (剛性) によって、剥離の様子は大きく異なる。
この講演では、特に、タック・粘着力測定における剥離のメカニズムについて、主にレオロジー・非線形動力学の立場から解説・紹介する。
- はじめに
- 「粘着」の定義
- 粘着の無矛盾な課題「剥がれにくく、剥がれやすい粘着剤」
- 剥離のタイプ
- 空間スケールと剥離現象:粘着の強さを決める要因は?
- 粘着とレオロジー
- 高分子の粘弾性
- 変形と流動
- 簡単な力学モデル:マクスウェルモデル
- 粘弾性、静的から動的へ:複素弾性率
- 剥離と粘着の三要素
- 粘着特性に関する経験則
- Dahlquistの経験則 (良い粘着剤を、粘弾性から判断する)
- テープ剥離時の応力分布
- 剥離による粘着剤の変形・形態形成
- Viscous Fingering
- タックにおける粘着剤の形態形成
- cavity、fibrilの形成と粘着力
- 剥離速度・温度依存性
- 粘着テープの剥離における粘着剤の形態形成
- 剥離のマスターカーブ
- fibril 形成のメカニズム
- tunnel 形成のメカニズム → マスターカーブの修正
- 剥離のダイナミクス
- 剥離の非線形性・非単調性
- 剥離速度・装置剛性の影響
- tunnel 構造の出現と粘着力の関係
- 動的相図の重要性