信号の時間的な周波数の変化を捉える手法を時間周波数解析手法とよびます。本セミナーでは、時間周波数解析手法であるウェーブレット解析の全体像を見通しよく概観することを目的とします。ウェーブレット変換には、連続ウェーブレット変換と離散ウェーブレット変換の2種類が存在します。連続ウェーブレット変換はフーリエ解析における短時間フーリエ変換に類似する手法です。一方で、離散フーリエ変換がフーリエ変換の離散化版であることに対して、離散ウェーブレット変換は連続ウェーブレット変換の単なる離散化に留まりません。離散ウェーブレット変換は信号処理におけるフィルタ処理によって実現されますが、その構造はマルチレート信号処理のフィルタバンクと密接な関係があります。 本セミナーでは、初学者にもわかりやすいよう、まずは前半パートで連続ウェーブレット変換と離散ウェーブレット変換の直感的な説明を行い、音声・画像処理への応用例を示すことで、ウェーブレット解析の全体像を理解します。ベクトル空間やフーリエ解析についても一から簡単に説明を行うので、特別な知識なしでも受講できるように配慮します。後半パートでは、やや発展的な内容を扱い、離散ウェーブレット変換に関連する話題を掘り下げます。最後に、ウェーブレットの拡張ともいえるフレームの概念について紹介し、具体例としてカーブレット変換などの2次元の時間周波数解析手法を紹介します。