医療現場から得られる情報 (=リアルワールドデータ、以下RWD) の利活用は医薬品の承認申請から市販後まで全てのフェーズで期待されるところですが、特に医薬品の安全性監視 (=ファーマコビジランス、以下PV) 領域においては製造販売後データベース調査の施行等、RWDの実用が最も進んでいるフェーズかと思います。
何より重要な副作用リスク懸念が生じた際には、その時点から時間的に前向きな研究を行ったのでは意思決定があまりに遅く、それゆえにログとして残されているRWDの利活用はPV領域での利用がもっとも親和性が高いとも言えるでしょう。今回の講演では、PV領域における本質を踏まえつつ、私たちがRWD活用のスキルを習得することでいかに副作用被害を最小限にとどめることが出来るのかといった社会的な視点をまずは俯瞰してみたいと思います。
そのうえで、より具体的な活用方法として種々の疫学的手法の習得を目指します。RWDの活用はシンプルな年齢構成比や投与期間分布、警告レター発出前後による医療者や患者さんの行動変容など、観察研究一般のデザインに限定されるものではありません。こうした基礎的スキルはPMS担当者ではなく、むしろICSR (個別副作用症例) 担当者が修得すべきものだと思います。もちろん、RWD活用の最大の難関 (?) であるところの「適応の交絡」、つまり重い病気の人に処方されがちな医薬品と、軽い病気の人に処方される医薬品をどのようにフェアに比較するのか。プログラムの作成までは及びませんが、方法論の概念を理解し、研究論文を適切に読了できるスキル獲得についても目指したいと思います。
- 承認時に残される課題を整理する
- 1000人に1人発生する重篤な副作用リスク
- 長期処方による血球減少リスク、色素沈着リスク
- 高齢者、妊婦、小児、合併症患者への処方リスク
- RWDの活用が出来なかった時代の対処策
- 個別副作用症例集積の限界
- 使用成績調査の限界
- リスク最小化活動の限界
- 過去のユースケースから現代版「最適解」を考える
- 催奇形性のリスク
- スモン
- 飲み合わせのリスク
- 心毒性のリスク
- RWDはいかにしてPVに役立つのか
- 現時点での活用可能なRWD
- 将来へ向けた電子カルテ標準化がもたらすもの
- 将来へ向けた次基法DB、NDBのPV活用
- 将来へ向けた画像・音声・動画とAI活用
- 将来へ向けたPHR、ウェエアラブルデバイスの活用
- 将来へ向けたゲノム情報の活用
- 規制サイドの変化とRWD活用への期待
- 薬機法改正の歴史は薬害の歴史?!
- 製造販売後データベース調査の登場
- MID – NETプロジェクトがもたらしたもの
- 通知から見える製造販売後データベース調査の“出口戦略”
- 通知からみえる記述疫学、時系列分析での活用
- 個人情報保護法改正の動き
- 次世代医療基盤法改正の動き
- 「クセが強い」RWDと向き合う
- 選択バイアスに気付けるようにする
- 情報バイアスに気付けるようにする
- 交絡を制御する方法論
- 疫学研究デザインを学ぶ
- STROBE声明
- RECODE声明
- コホート研究
- ケース・コントロール研究
- 自己対照モデル
- システマティック・レビュー
- 疫学・統計手法を学ぶ
- 層別解析
- 生存時間分析
- ロジスティック回帰分析
- 傾向スコア法
- IPTW法
- 時系列分析
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