水素脆性は材料の高強度化や水素エネルギー利用技術開発などに伴って新たに重要性が高まっている。水素脆性は古くからの問題であるが、その表れ方は材料や使用環境によってさまざまである。水素脆性には従来から経験的な対応が多いが、近年は実験手法の進歩もあってその実体と本質の理解が急速に進んでいる。
本講では金属材料の水素脆性の特徴と作用因子、さらに脆化機構と実用的な評価試験法について基本事項を整理する。
- 水素脆性の表れ方とその特徴~水素脆性はどのような現象でどう見分けるか
- 歴史的経緯
- 水素侵入のもと
- 割れ発生の例
- 各種材料試験における強度特性の劣化と試験条件の影響
- 破壊過程と破壊形態の特徴
- 材料中の水素 ~脆化をもたらす水素とは
- 材料中の水素の存在状態と拡散挙動
- 水素の状態分析法
- 水素の存在状態と脆化との関係
- 水素脆性に影響する材料因子 ~材料の何が水素脆性をもたらすか
- 材料強度の影響
- 材料因子の影響
- 合金元素
- 不純物
- 材料組織
- オーステナイト系ステンレス鋼
- 破壊過程における水素の作用 ~水素と塑性変形との相互作用、脆化機構~
- 水素脆性の評価法とその意味
- 評価法が満たすべき要件
- 評価法の現状
- 遅れ破壊試験法
- JIS原案法
- FIP試験法
- NACE TM-0177-2005
- 水素脆性と水素量との関係、限界水素量の意味
- 評価試験法の注意事項と問題点
- 水素添加法
- 負荷方法と試験片形状
- 試験温度
- 環境変動効果
- 試料履歴