カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の点から今後発展が期待されている水素について、自動車会社で燃料電池車開発に携わった経験をもとに取扱いの基礎知識を解説します。工業的には既に多量に使われている水素ですが、危険なガスとされています。それは、アセチレンガスなど他の爆発性を有するガスと異なり、著しく軽い、漏洩し易いといった性質と伴に、材料の内部に侵入し場合によっては材料破壊の要因となり大きな事故を引き起こすという特異な性質を持っているからです (水素脆性など) 。
本講座では、水素エネルギー利用に欠かせない燃料電池について、その歴史から現在の動向に関する話題にも触れながら、水素の特異性やそれに対する現在の対処方法を中心に基礎知識を解説します。また、水素の特異性は使用材料の制限、設備や関連機材の特殊性、法規制などに繋がっており、高コスト化の要因の1つにもなっています。低コスト化に向けては水素取扱いに関する更なる知識や技術向上が必要です。本研修がその一助になればと考えています。
- 導入
- 水素ガスの歩み、FCVへの水素搭載方法検討の経緯
- FC (Fuel Cell、水素燃料電池) の歩み
- FCの普及状況
- FCV (Fuel Cell Vehicle) の普及状況
- FCV以外への展開
- 水素の爆発性とその対策 (事故事例紹介など)
- 高圧水素ガスの法規・基準について
- FCVでの材料課題 (金属材料の法規制)
- 高圧水素ガス環境での金属の水素脆性
〜低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金について講師の実験結果を中心に説明〜
- 水素脆化事故事例
- 高圧水素ガスによる水素脆化研究の歴史
- 金属材料強度への水素ガスの影響 (〜70MPa)
- 引張強さ
- 遅れ破壊 (低合金鋼)
- 疲労強度 (低合金鋼)
- 金属の水素脆化の原因について (固溶と拡散)
〜鉄鋼材料中心とした金属と水素の関わりに関する基礎知識〜
- 金属結晶と水素
- 金属の結晶構造
- 各種金属の水素固溶度
- 鉄結晶の水素固溶位置
- 実用鉄鋼材料での水素存在位置
- 水素の分析方法
- 水素侵入のプロセス (鉄系材料)
- 水素固溶量の計算
- 腐食環境での水素侵入量と疲労強度 (低合金鋼)
- 水素の拡散 (各種金属)
- 応力集中部への水素の拡散凝集 事故事例紹介 (鉄系材料)
- 水素による脆化メカニズム推定 (鉄系材料)
- 高圧水素ガス環境でのその他の材料課題
- 水素と樹脂
- 水素とゴム (ブリスタ)
- 水素環境下でのトライボロジー
- その他
- 水素ガス・実作業時の安全確保 – リスクアセスメントの紹介
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ライブ配信の画面上でスライド資料は表示されますので、セミナー視聴には差し支えございません。
印刷物は後日お手元に届くことになります。
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