免疫性血栓性血小板減少性紫斑病の歴史、病態、治療の新たな展開と残された課題

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後天性血栓性血小板減少性紫斑病 (後天性TTP) は、微小血管血栓症 (TMA) の1病型であり、血管内皮から分泌されたvon Willebrand factor (VWF) の大きな重合体が、末梢の細動脈等で、ずり応力によって進展された際に、通常であればVWFのA2ドメインでVWFを切断するADAMTS13と呼ばれる酵素に対する中和抗体や時に結合抗体が生じて機能せず、VWFが非常に大きな重合体のまま進展し、その各A1ドメインに血小板が結合、さらに末梢に進んでVWF血小板血栓を生じ、消費性の血小板減少と虚血による組織障害を生じる疾患である。後天性TTPは、現在ではその機序により次第に免疫性TTPと呼ばれるようになっている。  疾患の概容が明確になった1966年時点では致死率90%とされていたが、その後病因が明確になる以前に、新鮮凍結血漿 (FFP) を用いた血漿交換の有効性が前向き比較試験で確立し、さらに免疫的機序が明らかとなって、血漿交換と副腎皮質ホルモンを中心とした免疫抑制療法が初期治療として確立、死亡率も20 – 10%程度まで改善した。しかしながら、FFPを用いた血漿交換は、抗ADAMTS13抗体を除去する一方で不足するADAMTS13を補充する治療であるが、同時に抗体産生しているBリンパ球に対応抗原を負荷する治療であるため、約半数でinhibitor boostingと呼ばれる、いったん減少した抗体の再上昇による病状の悪化が生じ、免疫抑制の強化と頻回の血漿交換が必要となる。  ADAMTS13活性、インヒビターの確認には時間がかかる一方で、死亡症例の大部分は、発症早期の微小血管血栓による心臓死であることも明らかとなり、早期対応の重要性が指摘されている。ラマは重鎖のみの抗体を持つが、VWFA1ドメインに対するラマの抗体の可変部位をヒト化したNanobodyであるCaplacizumabが、昨年血漿交換、適切な免疫抑制薬との併用で保険適応となった。Caplacizumabは、抗ADAMTS13抗体存在下でも、VWFと血小板の結合を阻害し、VWF血小板血栓形成を阻止するため、血栓形成も血小板減少も速やかに生じなくなる。海外国内の治験で有効性が確認され、2023年の我が国の診療ガイドでも1Aの評価となっている。ただし、Caplacizumab使用下では、抗体が存在しADAMTS13活性が著減していても症状は改善するので、臨床症状の改善が病因の解決に結び付かないことに留意が必要であり、臨床症状のみで病因が改善されたと誤認すると、その中止によってTTPが再燃しさらに病状を悪化させる可能性がある。CaplacizumabはTTP治療のパラダイムシフトをもたらす薬剤である一方、強力な免疫抑制療法と綿密なADAMTS13活性、抗体価の確認がその終了時期の決定には必要である。免疫性TTPは初期対応が重要な疾患であるが、疑うことができれば診断にたどり着くことは難しくない。その歴史、病態、治療について、最新の知見も交えて、理解を深めていただきたい。

  1. 免疫性血栓性血小板減少性紫斑病の歴史、病態、治療と新たな展開
  2. 血栓性微小血管症
  3. 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) 診療の歴史
  4. TTPの病態
  5. 先天性TTPと免疫性TTP
  6. TTPの治療と問題点
  7. 免疫性TTP の臨床
  8. 免疫性TTP診療の新たな展開
  9. TTPの診断・治療における臨床ニーズ

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