最近、スピントロニクスという言葉を耳にする機会が多くなったと思いませんか?
CMOSに代表されるシリコンデバイスが微細化や機能向上の限界を迎えた現在、次世代デバイスとして、電子の持つスピンを応用したエレクトロニクスデバイスが注目されています。
スピントロニクスを理解するには、磁性学の基礎を学ぶとともに、スピンの流れという最新の先端的な学理を知ることが必要です。
この講習会では、磁性の基礎からスピントロニクスまでを、受講者との対話を通じてやさしく解説します。
- 知っていると得する磁性の基礎
異分野からスピントロニクスの世界に踏み込もうとするとき立ちはだかるのが磁性の基礎知識です。
ここでは最低限必要な磁性の基礎知識をおさらいしておきます。
- 磁石をどんどん分割すると?
- 電子の軌道とスピンが原子の磁性を作る
- スピンってなに?
- 鉄はなぜ磁性をもつか?
- 磁気ヒステリシスはなぜ起きる?
磁界、磁束、磁化、磁気モーメント、軌道角運動量、スピン角運動量、磁化曲線、磁区、磁気異方性などの基礎知識をひととおり学びます。
- コイルなしに磁気を電気に変える
フェールとグリュンベルクが見いだしたGMR、さらには、日本人が発見した室温TMRによりコイルを遣わずに磁気データを電気信号として取り出せるようになり、ハードディスク (HDD) の高密度化に寄与しました。
- 巨大磁気抵抗効果 (GMR) 発見物語
- GMR磁気ヘッドがハードディスクを変えた。
- トンネル磁気抵抗効果 (TMR) とMRAM
- MgOバリアでTMRが実用レベルに
- ハーフメタル電極でさらなるパワーアップ
- コイルなしに電気を磁気に変える
- スピントランスファートルクとは?
- スピン注入磁化反転とスピンRAM
MRAMに大きなイノベーションをもたらしたのは、スピン注入磁化反転の導入です。これによりMRAMは高密度化が可能になりました。
スピン注入磁化反転を使ったMRAMをスピンRAMといいます。
- スピン注入磁壁移動とRace track memory
- スピントルク振動子とスピントルクダイオード
- 光でスピンを変える
- スピン流がパラダイムを変える
上向きスピンの電子と下向きスピンの電子が互いに逆方向に流れると、正味の電流は流れないが、スピン流は流れます。スピン流はジュール熱を伴わないのです。これが観測できるようになったのはナノテクがあればこそです。
- 電流スピン流と純スピン流
- 絶縁体とスピン流
- スピンホール効果、逆スピンホール効果
- 熱スピン流とスピンゼーベック効果
温度差があると熱スピン流が流れ、スピン蓄積が起きます。これを使ったデバイスも作製されています。
- スピントロニクス材料
- 金属・合金材料
- 磁性体 (Fe, CoFe, FeNi, ホイスラー合金)
- 非磁性体 (Cu, Al,Pt,Pd)
- 非金属材料
- 磁性体 (YIG, LSMO…)
- 非磁性体 (グラフェン、Si、GaAs、Al2O3, MgO)
- 光スピニクス材料:TbFeCo, GdFeCo
- まとめと今後のスピントロニクス
主催者より
電子製品の省エネや創エネへ向け、現実的な新しい技術、次世代デバイスの要として期待されているスピントロニクス。近頃では、実用化への動きも急速に慌ただしくなってきております。「異分野どうしの融合」が今後ますます重要となっている象徴であるかとも存じます。しかし、「異分野」である「磁気」の世界だからこそ、分かりにくい事、ピンとこない事も多いのではないでしょうか。
「スピントロニクスの概略を理解するため、近年、磁性の概念は新しくなりました」と、講師は言います。
当セミナーでは、分からないことが多いからこそ、少人数制・質問を多く取り入れた、講師との距離が近い「ゼ」ミナー形式で、スピントロニクスのための磁性の基礎から、スピントロニクスの今とこれからをご提供いたします。