衝撃工学は身近に存在する衝突 (自動車、航空機など輸送機器) 、落下 (携帯などの電子デバイス) のような実現象問題を解明する上で必要不可欠な分野ですが、市販の試験装置で簡便に評価できない、衝撃工学を解説した参考書が非常に少ない、具体的にどうやって実験すれば良いかわからない、等々の理由から難しい学問という印象を持たれてしまいます。しかし、衝撃工学の正しい知識は、現実的かつ安全性を考慮した構造物の強度設計 (耐衝撃設計) に大きく役立つことは間違いありません。
本セミナーは、力学、材料力学、機械材料学を使って衝撃工学を学ぶ初学的な位置付けで、基礎を重視した内容です。衝撃工学で重要となる応力波の概念、材料の変形挙動を表す材料構成式、材料学的な視点からの基礎理論 (金属材料における転位運動の熱活性化理論) 、衝撃変形時の応力 – ひずみ関係の計測方法、特に衝撃変形を取り扱うJISZ2205:2019 (スプリット・ホプキンソン棒法を用いた高変形速度試験方法) について詳細を扱います。また、有限要素解析、耐衝撃設計に活かすためのケーススタディーとして、高分子材料や発泡構造体、CFRPに触れて、実用的な衝撃工学の知識とその応用として耐衝撃設計へのアプローチを説明します。
- はじめに〜耐衝撃設計の必要性〜
- 衝撃工学の基礎知識
- 材料力学の教科書における衝撃問題
- 応力波伝播の基礎知識
- 応力波伝播による弾性変形
- 応力波の入射、透過、反射
- 応力波の伝播問題に関するケーススタディー
- 応力 – ひずみ関係 (材料構成式)
- ひずみ速度依存性
- 転位運動の熱活性化理論
- 衝撃変形における材料・構造体の応力 – ひずみ関係の計測方法
- 衝撃試験計測で落ち入りやすいミス
- 一般的な衝撃試験の計測手法 (ひずみゲージによる測定)
- 高速度カメラを使用した衝撃現象の観察
- 代表的な衝撃試験方法
- スプリット・ホプキンソン棒法
- ワンバー法
- 落錘試験
- その他
- JIS規格に対応した衝撃変形試験方法:スプリット・ホプキンソン棒法
- 概略
- 理論
- 圧縮試験
- 引張試験
- 曲げ試験
- 評価方法と精度保証
- 衝撃における有限要素解析
- 衝撃問題における有限要素解析
- 陽解法を使った解析
- 材料構成式の重要性
- 材料構成式の決定方法
- 耐衝撃設計における有限要素解析の利便性
- ケーススタディー〜耐衝撃設計への応用〜
- 鉄鋼材料、アルミニウム合金の衝撃変形特性 (熱活性化理論も含めて)
- 高分子材料の衝撃変形特性
- 発泡構造体の衝撃緩衝・吸収エネルギー評価とその応用
- 衝撃緩衝・吸収特性評価における注意
- 耐衝撃設計の考え方一例
- CFRPの衝撃3点曲げ試験
- 衝突現象における耐衝撃設計 (例:火山防災)
- その他
受講者の声
- 衝撃を式で現せることを知ることができ、とても有意義でした。また、実験評価が欠かせないことは大変参考になりました。
- セラミック材の強度評価の知見がほとんど無かったため、実践的な強度評価手法を学ぶことができ、非常に有意義なセミナーでした。
- 説明の構成がとても分かりやすかった。世間一般に知られていないノウハウの部分を紹介していただいたのが勉強になった。研究の中で何が課題となっていて難しい部分なのか説明があり参考になった。
- 基本となる応用波、材料精成式、またその影響などの理解が進みました。衝撃の基礎的な考え方を学べたので設計に入れたみたい。
- 衝撃力の考え方を学ぶことでき、勉強になりました。より具体的な設計事例の紹介があればもっと聞きたかった。
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