高性能工業材料の技術開発はめざましく、従来の金属材料から多種多様な材料が実用化されており、また製造技術、物性値の計測技術も進歩している。一方、材料が高強度になるほど、部材の残留応力 (内部応力) も大きくなるので、残留応力の評価・管理はますます重要になっている。残留応力は、部材内部に残存している応力である。機械設計時には、使用時の負荷応力を主体とした強度設計が主体となり、残留応力の存在はあまり考慮しない。しかし、この残留応力が損傷要因となって、しばし不具合が発生している。一方、機械構成部品、特にバネ、軸受、ネジ、歯車等の機械要素には積極的に残留応力を活用しており、品質管理はこの残留応力導入の管理といっても過言ではない。部品の寿命、耐久性はこの残留応力値で大きく変化する。残留応力の管理値は、部品メーカのノウハウであり、一切公開されていない。また、残留応力の計測方法も非公開な場合が多い。残留応力を計測、評価することは製造現場では重要な技術であるとともに、対象製品に最適な残留応力計測手法が研究・開発されており、実用化されている。さらに、最近では小型X線応力計測装置が実用化されており、タンク、配管、橋梁、鉄道などの大型インフラ設備に対して、現地で実応力負荷計測にも採用されつつある。
残留応力の計測には、部材を細かく切断して内部応力を解放する破壊試験法、ひずみゲージ近傍に穿孔して局部的にひずみ解放する準非破壊試験法、X線、中性子などの放射線回折による結晶格子間隔変化を計測する方法、磁性変化、音速などの物性値変化による応力計測法等の非破壊試験法が実用化されている。
本講習会では、この残留応力技術の基礎、種々の計測方法と注意点、評価・有効活用と不具合事例などを残留応力技術の全般を紹介し、残留応力の課題について実践的に対応できることを目標とする。このような残留応力の一般的な技術背景、個々の計測方法について紹介、実計測時の注意点、計測値の評価、課題などを詳細に紹介する。
- 残留応力の基礎と背景
- 残留応力とは
- 残留応力の管理と運用
- FEMなど数値解析による手法との差
- 材料力学の基礎とひずみ計測法
- ひずみの定義
- 応力の定義
- 応力とひずみの関係
- 弾性変形と塑性変形の関係
- 熱膨張による変形
- 疲労
- 弾性破壊に関する種々の仮説
- ひずみ・応力の計測方法
- X線応力計測法とその他非破壊計測法
- X線による応力計測方法の原理と最近の計測装置
- その他の非破壊計測方法
- 応力解放法による残留応力の計測法
- 残留応力の定義
- 各種測定方法と測定深さ
- 応力解放法による残留応力測定
- 切断法 (Sectioning)
- 穿孔法 (Hole Drilling)
- DHD法 (Deep-Hole Drilling)
- その他の方法
- Ring Core法
- Slitting法
- Contour法
- 残留応力の利用と損傷事例とその対策
- 残留応力の利用方法
- 残留応力による損傷事例と損傷の対策 (応力除去方法など)
- まとめと質疑応答
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