J.H.Hildebrandが正則溶液理論の研究において定義した、物質の凝集エネルギー密度 (CED) である溶解度パラメータ (Solubility Parameter:SP値:δ[J/cm3]1/2) は、物質 (気体・液体・固体) は物質固有の物性値であり、SP値として一般に知られています。現在でも、SP値は、物質 – 物質間の溶解度、親和性、ぬれ性、接着性、溶媒中微粒子の分散・凝集性などの評価に多用されています。
C.M.Hansenは、Hildebrand が提案したSP値の凝集エネルギー (ΔE) を、それぞれの物質の分子間に働く相互作用エネルギーの種類によって分割し、SP値を、分散力項 (δd) 双極子間力項 (δp) 、水素結合力項 (δh) として表し、ハンセン溶解度パラメータ (以下:HSP値) として提案しました。現在、HSP値は高分子 – 溶媒間、高分子 – 高分子間などの相溶性評価、ナノ粒子の溶媒中での凝集・分散性評価、各種樹脂の溶媒に対する耐性評価、界面活性剤、イオン液体の評価や、純溶媒、混合溶媒における物性値 (表面張力、屈折率、誘電率、熱伝導度、比熱、沸点、融点など) との相関など、幅広く用いられています。また、HSP値は、化学製品の製造工程において、溶質に対する最適溶媒の選択や混合溶媒の最適な組み合わせの選定、さらに、最適混合比などにも有効であることが報告されています。また、ハンセンらは、Hansen solubility sphere法 (以下:溶解球法) を提案しており、多くの研究者から注目されています。
この講演会では、溶解度パラメータの基礎について解説したのち、先端機能性材料開発への応用として以下に示す内容について具体的な実施例を用いて説明足します。
- 凝集エネルギー密度 (CED) と溶解度パラメータ (HSP) の基礎
- 溶解度パラメータ (SP) およびハンセン溶解度パラメータ (HSP) の基礎的な理論、概念について説明いたします。
特に、ハンセンの提案する3Dグラフ上での評価方法の意味、使い方、応用について、まずは基礎的な内容から説明します。
ハンセンの3Dグラフ上での2物質間の距離 (Ra値) を用いた相溶性の評価方法について解説します。
また、沸点、屈折率、誘電率、溶媒極性パラメータとの関係性についても解説します。
- 炭素材料の凝集緩和挙動解析
- 石油系の重油由来の炭素材料であるアスファルテンは凝集した状態で存在します。
この物質の溶解度パラメータをハンセン溶解球法で測定する方法を説明し、凝集緩和のための良溶媒の選定方法、混合溶媒の設計方法について説明します。
また、3次元グラフ上での2物質間の距離 (Ra値) による相溶性の評価、親和性の評価方法についての基礎的な理論を説明します。
- 分子グループ寄与法による溶解度パラメータの推算法
- 高分子の分子構造からの溶解度パラメータを推算する方法は、各種提案されている。
これまでに文献によって発表されている、分子グループ寄与法について、その考え方と計算方法を説明する。
- 各種ポリマーの溶解度パラメータの測定および相溶性評価
- 各種ポリマーは先端機能性材料として開発が行われていますが、セグメントの違い、分子量の違いで溶媒への溶解度、親和性、濡れ性は異なります。
ここでは、各種ポリマーの溶解度パラメータの測定方法の実例、セグメントの違いによる影響など説明します。
さらに、最適な溶媒の設計方法について、純溶媒の場合、混合溶媒の場合の組み合わせ方法の考え方について説明します。
- 重合度の異なるポリマーの溶解度パラメータの測定および相溶性評価
- 各種ポリマーは先端機能性材料として開発が行われていますが、セグメントの違い、分子量の違いで溶媒への溶解度、親和性、濡れ性は異なります。
ここでは、各種ポリマーの溶解度パラメータの測定方法の実例、重合度の違いによる影響を、溶解度パラメータの変化から考察し、最適なポリマー重合度の設計について説明します。
- 固体表面の溶解度パラメータの測定方法と実施例
- 固体表面の凝集エネルギー密度や表面自由エネルギーは、表面の濡れ性、接着性、相溶性に重要な物性値です。
ここでは、固体表面に対する、各種純溶媒の接触角測定から、固体表面の溶解度パラメータを求める方法について説明します。
- 光学機能性材料とフィラーとの組み合わせによる透明性の評価
- 光学材料の機能性 (耐熱性、熱伝導性など) を向上させるために、様々な方法が提案されている。
多くの場合、光学フィルムにフィラーを添加する場合があるが、透明性の維持は容易ではない。
ここでは、光学フィルムとフィラーの溶解度パラメータを用いてフィルムの透明性の評価方法について説明いたします。
- 樹脂/アルミナ複合材料の溶解度パラメータを用いた強度評価
- 機能性材料設計において、材料強度の予測は容易でない場合が多いです。
ここでは、樹脂と微粒子の複合材料を作成した場合、両者の溶解度パラメータと作成された複合材料の強度との関係を評価します。
- 樹脂複合材料の溶解度パラメータを用いた強度評価
- 生分解性樹脂 (プラスチック) は、自然環境下で、一般の樹脂よりも分解されやすい反面、強度は低い問題があります。
そこで、複合材料の組み合わせと強度の関係を溶解度パラメータによる評価について説明します。
具体的には、PVA+各種セルロース複合材料の強度評価について溶解度パラメータの実施例を説明します。
- 接着剤の溶解度パラメータを用いた金属接着強度の評価
- 物質同士の接着に利用される接着剤と接着強度の予測は重要です。
ここでは、金属表面の溶解度パラメータと各種エポキシ樹脂接着剤の溶解度パラメータを比較して接着強度の評価を行い、実験によって測定された強度と比較した結果について説明します。
- 微粒子表面の溶解度パラメータ測定および溶媒中での凝集・分散性評価
- 固体表面を有する微粒子・ナノ粒子表面の溶解度パラメータを、各種溶媒中での微粒子分散性から平均粒形 (DLS) によって評価し、表面の溶解度パラメータを求め、最適分散溶媒の設計方法の考え方について解説します。
また、大きな粒子、高密度粒子の微粒子表面の溶解度パラメータ測定法として、浸透速度法についても解説します。
- ドレイズ試験結果を用いたウサギの眼表面および皮膚表面の溶解度パラメータ予測
- ドレイズ博士が、ウサギの眼に対する化学物質の毒性試験結果を、化学薬品の溶解度パラメータから再評価し、溶解度パラメータからウサギの眼表面の溶解度パラメータを予測した結果について説明します。
さらに、ウサギの皮膚について同様の評価を行った結果を解説します。
- 花粉表面の溶媒浸透速度を用いた溶解度パラメータの測定
- 花粉表面の溶解度パラメータの値がわかれば、花粉のつきにくい繊維や、反対に花粉を効果的に回収できる溶媒設計が可能になると考えられる。
ここでは、l花粉表面の溶解度パラメータ評価結果から花粉回収溶媒の設計を試みたので解説する。
- 溶解度パラメータを用いた将来の機能性材料設計への応用
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