核融合の連続燃焼をめざす実験炉イーター (ITER) が日欧米露中韓印の国際協力でフランスに建設中です。2.5兆円をかけた国際プロジェクトで、50万キロワットの核融合出力を予定しています。2007年から建設が続き完成は2027年頃。完成後10年ほどの実験を経て、入れたパワーの10倍の核融合パワーを出す計画です。このような長期にわたった核融合開発計画が進む中、昨今の報道では、新規ベンチャー企業が10年以内に小型核融合炉を実用化などのニュースでにぎわい、矛盾した内容で人々を戸惑わせています。これは、学界内での広範で堅実なレビューが基盤にある科学発表と、部分的な成功の将来性を楽観的に誇張したマスコミ向け発表が、区分けなく報道されるためです。この混乱の責任は注目度を狙った発表をする側にあり、報道側のせいではありません。
本講座では、核融合炉設計の専門家として日本の核融合開発戦略にも長らく関与してきた講演者が、核融合開発の本当の現状と将来の見通しについて、わかりやすくお話しします。また、今後のイノベーションが期待される技術分野などもご紹介します。なお、名称変更の政府発表 (2023年6月8日) に沿い、「核融合」は原則として「フュージョン」と表記する予定です。
- フュージョン炉の基本
- フュージョンエネルギーとは
- 一億度を閉じ込める方法 (磁場とレーザー)
- 過去の開発史と日本の試験装置JT-60SA
- 国際協力で建設が進む実験炉ITER 出力50万kW
- ITERの性能は今でいう「機械学習」で予測した
- フュージョン炉の4大要素技術
- 実用化に向けた開発計画とコスト
- 色々なフュージョン反応
- よくある疑問と回答
- 水爆のように爆発しないのか
- 福島事故のようにならないのか
- 放射性廃棄物で破綻しないのか
- 1億度なのにお湯を沸かして発電するのか
- 磁場方式フュージョン炉
- 閉じ込め磁場の構成
- 一億度への加熱と電流の駆動
- 日欧の成功と米の挫折
- プラズマ性能の制約条件
- 未来エネルギーとしての資質
- 燃料資源はどこに
- 燃料増殖 リチウムから三重水素を作る
- 最初に三重水素がなくても起動可能
- 安全性と潜在的ハザード比較
- ITER計画
- 実験炉ITERの概要
- 目標と達成の見通し
- 過去のイノベーションと期待されるイノベーション
- プラズマ
- 超伝導コイル
- ダイバータ
- ブランケット
- 遠隔保守技術
- 磁場フュージョン炉の概念設計例
- ITERで発電したら正味電力は出るか
- フュージョン炉の設計例
- 建設コストと発電コストの予測分析
- 慣性 (レーザー) 方式フュージョン
- レーザーフュージョンの原理と特長
- 米国におけるレーザー方式の進展
- 日本の発明 高速点火法
- レーザー炉の概念設計例
- レーザー炉特有の技術課題
- 年後に実用化って本当なの
- 米英ベンチャーの小型炉案 棚上げされた課題はなにか
- 先進燃料フュージョン炉 実現には高いハードルがある
- 実用化に向けた核融合開発計画
- 日本の開発ロードマップ
- 海外の開発計画
- 日本のスタートアップ企業
- おわりに
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