膜によるガス分離は原理的に消費エネルギーが少ないガス分離法である。操作も簡単で装置の構造が単純である、などの特徴を持つ。1980年頃から実用化が始まった比較的新しい分離法である。実プロセスにおける利用は徐々に広がっており、新規なプロセスへの複合化の研究開発も進んでいる。低炭素化技術としての可能性も高く、今後、化学プロセスの効率化の手段の一つとして膜ガス分離を検討する機会は増えると考えられる。
しかし、膜分離の基礎から応用に習熟した化学技術者は少ない。近年、化学工学の教科書に記載され始めてはいるが、授業で取り上げられることはなく、従来から利用されている蒸留、吸収、吸着ほど認知度が高くない。膜分離を深く理解するためには、分離膜に用いられる膜材料の知識から、その分離膜を使うときのモジュールの構造と運転操作の方法まで、幅広い知識が必要である。
本セミナーでは、膜によるガス分離の基礎と応用および研究開発の現状を解説し、膜ガス分離法への理解を深める基礎知識を提供する。
- ガス分離の概要
- 蒸留法、吸収法、吸着法
- 膜ガス分離法の概要
- 膜ガス分離の仕組み
- 膜ガス分離の歴史と利用例
- 膜ガス分離法のメリット
- 膜ガス分離法のデメリット
- 膜ガス分離の基礎
- パーミアンスと分離係数
- 膜モジュール
- 圧力差と圧力比
- 多段プロセス
- 分離膜に用いられる膜材料
- 高分子膜
- 液膜と促進輸送膜
- 炭素膜
- シリカ膜
- ゼオライト膜
- パラジウム膜
- 膜素材の特徴と比較
- 低炭素化技術における膜ガス分離の可能性
- 水素分離膜
- 二酸化炭素分離膜
- 反応との複合化
- まとめ
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