本セミナーでは、国内外における陸上・洋上風力発電を取り巻く最新動向と将来的な展望について解説いたします。
政府は、2023年12月に大規模洋上風力発電の第2回の入札結果を公表した。2021年12月の第1回は、入札する発電価格の安さを武器に、三菱商事をはじめとする企業連合が、秋田県と千葉県の3海域を独占したものの、第2回は落札のルールを、稼働開始時期、落札上限をはじめとして見直した。その結果、秋田県の海域 (31.5万キロワット) はJERA、伊藤忠商事、東北電力、Jパワー、新潟県の海域 (68.4万キロワット) は三井物産、大阪ガス、RWE、長崎県の海域 (42万キロワット) は住友商事、東京電力リニューアブルパワーが落札し、新規参入者が多様となり、2024年の第3回の入札が注目される。 日本と世界にとって、2050年のカーボンニュートラルを実現するうえで、大規模な電力を得られる洋上風力発電、陸上風力発電は2024年も注目を集めている。米国バイデン政権も2050年に1億1,000万キロワットの浮体式洋上風力発電の建設を目指している。アジアにおける浮体式洋上風力発電の発電容量は、2040年に3,000万キロワットを超える。2021年12月に実施された、第1回目の秋田県、千葉県の洋上風力発電の公募入札について、三菱商事グループは、1キロワット時当たり11円〜16円の破格の安値を提示し、風力発電も熾烈な価格競争の時代に入っている。2023年12月の公募においては、公募ルールを変更し、1発電開始時期の早さを重視し、2同一企業が落札できる発電規模に100万キロワットの上限を設定し、3売電価格が一定以下 (3円) の場合には一律の評価とした。日本は、2030年度に温室効果ガス46%削減の目標を掲げ、2030年度の電源構成における再生可能エネルギーの割合を36%〜38%に引き上げる意欲的な目標を設定している。先進国、途上国を問わず、脱化石燃料の切り札として、従来の陸上風力発電に加えて、風況が安定した洋上風力発電の重要性が、世界的に一段と注目されている。風力発電は、技術革新、機器の大型化、量産効果により、発電コストが低下している。風況の良い場所においては、大量の発電を行うことが可能であり、2022年末時点において、世界全体で陸上風力発電8億4,190万キロワット、洋上風力発電6,430万キロワット、合計9億620万キロワットに達する風力発電設備が稼働し、世界全体において年間11億トンを超える炭酸ガス排出削減効果が見込まれている。大規模風力発電所 (ウィンド・ファーム) は、100万キロワットを超えるものが次々と誕生している。風力発電は、ライフ・サイクルで見た炭酸ガス排出量が少なく、独立した分散型電源として、離島、過疎地の電源としても利用が可能であり、夜間にも発電できる。既に、国土面積が広い中国、米国等においては、風力発電の普及が進み、今後は、日本のみならず、電力需要の伸びが著しい台湾をはじめとしたアジア、アフリカ等における風力発電の普及が期待されている。風力発電に関しては、発電量の増加、発電コストの低下を目指して、機器の大型化が行われており、洋上風力発電の風車の直径は200メートルを超え、1基当たりの発電量も1万キロワット超のものが開発されている。日本は、世界第6位の排他的経済水域 (EEZ) を誇り、洋上風力発電の今後の発展が大きく期待されている。日本は、グリーン成長戦略を掲げ、2030年までに1,000万キロワット、2040年までに浮体式を含めて3,000万キロワット〜4,500万キロワットの洋上風力発電を整備する目標を掲げている。しかし、デンマークの沖合いと異なり、日本の場合には遠浅の海域が少なく、今後は着床式から、浮体式洋上風力発電の技術開発が期待され、2018年12月には、洋上風力促進法 (再エネ海域利用法) が成立し、最長30年間、海域を利用できる規制緩和が行われ、洋上風力発電建設用のSEP船の建造も行われている。三菱商事、戸田建設、ENEOS、関西電力等が、洋上風力発電事業者となっている。長期的にも、日本における2030年までの経済波及効果は、15兆円、9万人の雇用創出が見込まれている。台湾も2030年までに1,000万キロワットの洋上風力発電を計画し、世界の洋上風力発電は、2020年の3,529万キロワットから、2030年には2億3,400万キロワット (市場規模937億ドル) 、2040年には5億6,200万キロワット、2050年には14億キロワットに達することが見込まれる。EU (欧州連合) は2050年の洋上風力発電を3億キロワット、陸上風力発電を7億キロワットとする意欲的な目標を表明した。世界的に陸上風力発電・洋上風力発電の拡大が見込まれ、2030年には21億1,000万キロワットと、世界の発電能力の2割を占め、2050年には60億キロワットと、世界の風力発電市場は、200万人を超える雇用を創出すると予測されている。風力発電は、太陽光発電と異なり、風車、軸受け、変速機、発電機をはじめとした2万点の部品から構成されるモノづくりの集積であり、風車に用いる炭素繊維をはじめとして、日本企業が素材・部品の強みを持っている。しかし、世界最大の風力発電国は、米国を抜いて中国となり、中国は国内メーカーの育成に力を入れている。中国企業、インド企業の台頭、中国企業のシェアの上昇とともに、米中対立の激化、先行する欧米企業の洋上風力発電事業強化により、風力発電における発電効率向上、価格競争が熾烈となっている。日本は、風力発電事業から撤退する企業もあり、時間がかかる環境アセスメントの規制、立地の制約、送電系統の空き容量の制約、漁業権等から、期待されていたほど風力発電の開発が従来は行われていなかった。しかし、インフラストラクチャー成長戦略分野の主役として、年間1兆円を超える日本の風力発電市場の成長への期待がかけられている。陸上風力発電、洋上風力発電が、日本および世界において、どのように成長するのか。資機材価格の上昇、人件費の高騰、借入金利の上昇にともなって、洋上風力発電の建設コストが上昇する状況において、米国、英国においては、洋上風力発電プロジェクトを中止する動きもでている。これから洋上風力発電に力を入れる企業にとっての留意点はなにか。2024年における日本企業にとっての事業戦略について分かりやすく解説する。
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