安定性試験の目的は、医薬品の品質、安全性および有効性を、その使用期限まで保証することにある。開発期間中の安定性試験結果は、承認申請医薬品の品質を把握するための重要な要素となる。これらが適切に実施されて、前臨床にはじまり第I相からIII相までの臨床試験の治験薬の品質と、承認後に市場に供給される医薬品の品質の間に一貫性が確保されることになる。
医薬品の安定性試験の実施手順は、基本的に「ICH (Q1) :安定性」の各種ガイドラインに基づく。しかし、開発期間中の安定性試験については、明確に設定されたガイドラインはなく、試験実施者の見識/経験等に基づく裁量に委ねられる部分が多い。開発期間中に生じる種々の問題に対処するためには、ICHガイドラインの原則を適切かつ柔軟に適用する必要がある。
本講演においては、開発段階から新薬承認申請 (NDA) に至る医薬品開発における安定性を担保するためにどのような安定性試験が必要か、また、それらをどのように実施すれば良いのか、安定性の予測から、安定性試験の設計 (計画立案) の考え方や有効期間の設定について説明する。
- 医薬品の開発と安定性試験の位置づけ
- 医薬品の開発ステージと安定性試験
- 「ICH (Q1) :安定性」ガイドライン
- 苛酷試験
- 安定性予測
- 安定性予測の目的と本講演での対象
- 従来知られている安定性の推定
- 反応速度論による安定性予測
- 研究の手順
- 反応速度に影響を及ぼす因子
- Arrhenius Plotによる安定性予測
- 安定性予測の問題点
- 速度論的な取扱いでの注意点
- 活性化エネルギー測定上の,及びその評価に関する注意点
- 分解率を求める時の注意点
- 実用速度論
- 熱分析装置を用いた安定性予測方法
- 従来の安定性予測方法とその問題点
- 熱分析装置を用いた安定性予測のフロー
- 実施例
- 開発期間中に必要な安定性試験
- 処方開発・包材選択のための安定性試験
- バルクホールド試験
- 輸送時・流通時の品質保証に必要な安定性試験
- 使用時の安定性試験
- 変更申請の際に必要とされる安定性試験
- 販売承認申請のための安定性試験
- 治験薬の安定性試験
- 開発段階の医薬品の安定性試験に適用される基本的な考え方
- 安定性試験計画の考え方
- 一般的な要求項目 (6つのステップと11コの検討要素)
- 安定性試験で必要とされる検討項目
- バッチ及びサンプルの選択
- 測定項目
- 分析・試験方法
- 規格 (項目と規格値)
- 保存条件
- 測定頻度
- 保存期間
- バッチ数
- 包装形態
- 評価
- 安定性情報・知見
- 安定性情報を得るための所要時間
- まとめ
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