サイバーテロは国境を越えて実行されます。医療機器企業は、サイバーセキュリティを確保した設計開発を確実に実施し、医療現場に提供することが求められます。一体どのようなリスクマネジメントを実施し、どのような手順書や記録を作成する必要があるのでしょうか。
2023年4月1日から、サイバーセキュリティ対策が基本要件基準の第12条 「プログラムを用いた医療機器に対する配慮」に追記されました。これにより、プログラムを使用した医療機器を製造販売する企業はサイバーセキュリティ対策が必須となりました。また、サイバーセキュリティ対策は、IEC 81001-5-1:2021 (JIS T 81001-5-1:2023) 「ヘルスソフトウェアおよびヘルスITシステムの安全、有効性およびセキュリティ」-第5-1部:セキュリティ-製品ライフサイクルにおけるアクティビティに準拠することとされました。
IEC 81001-5-1:2021はどのような規格でしょうか。IEC 81001-5-1は、IEC 62304やISO 14971などと同様、プロセス規格です。対象となる医療機器企業は、本規格に従った手順書の作成が求められます。IEC 81001-5-1は、IEC 62443-4-1「産業用自動制御システムの製品ライフサイクルのセキュリティ要求事項」への適合をサポートするために必要な、ヘルスソフトウェアの開発および保守のライフサイクルの要求事項を規定しています。また、ヘルスソフトウェアのサイバーセキュリティを強化するために、ライフサイクルにおいて実行するアクティビティをIEC 62304の順序で記載しています。つまり、IEC 62304対応手順書に、IEC 81001-5-1が要求するアクティビティを追加しなければなりません。
一方で、IMDRFが発行した「Principles and Practices for Medical Device Cybersecurity」 (医療機器サイバーセキュリティの原則及び実践。以下「IMDRFガイダンス」という。) は追補が出されました。本邦において、その内容に基づき「医療機器のサイバーセキュリティ導入に関する手引書 (第2版) 」が発出されました。これにより、Software Bill of Materials (SBOM) の取扱い、レガシー医療機器の取扱い、脆弱性の修正、インシデントの対応等が具体的に示されました。
ネットワークを介して医療機器がサイバー攻撃を受けるリスクや、当該医療機器が接続された医療機関等のネットワークを介して他の医療機器やコンピュータ等もサイバー攻撃を受け、障害が引き起こされる可能性もあり得るでしょう。医療機器がサイバー攻撃を受けた場合のリスクには下記のものが考えられます。
- 検査装置・診断装置:検査の中断や誤った診断に至る可能性
- 治療に用いられる装置:治療の中断等の事象の発生の可能性
- 放射線治療の線量等の計算プログラム:過量照射や不十分な量の照射が発生する可能性
サイバーセキュリティ対応は複雑で難解です。
本セミナーでは、医療機器におけるサイバーセキュリティ確保のための手順書例 (サイバーセキュリティ手引書 (第2版) 対応版) を配布し、要点を分かりやすく解説します。
- はじめに
- 医療機器の基本要件基準第12条 「プログラムを用いた医療機器に対する配慮」
- 医療機器の使用状況の無理解はサイバーセキュリティの致命傷になりかねない
- 情報セキュリティの3要素とサイバーリスクに対するリスクマネジメント
- 情報セキュリティインシデントとは
- ヘルスソフトウェアと法規制対象
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版 2021年
- 医療機器におけるサイバーセキュリティ
- サイバーセキュリティとは?
- IMDRFガイダンスの適用範囲
- 医療機器におけるサイバーセキュリティ
- 医療機器のサイバーセキュリティに関するよくある誤解
- サイバーセキュリティに関する規格とガイドライン
- IEC 81001-5-1:2021 (JIS T 81001-5-1:2023)
- IMDRFによるサーバーセキュリティに関するガイドライン
- 医療機器のサイバーセキュリティ導入に関する手引書 (第2版)
- 欧州医療機器規制 (MDR) によるサイバーセキュリティ要求
- 医療機器基本要件基準の改定
- 医療機器基本要件基準とは
- 医療機器の基本要件基準第12条第3項が追記
- 医療機器の基本要件基準第12条第3項の適用について
- サイバーセキュリティとリスクマネジメントの関係
- 脅威モデリングとは
- ISO 14971とセキュリティ
- 脆弱性、脅威および他のセキュリティ関連の用語のマッピングの例
- ISO 14971のリスクマネジメントプロセス
- リスクマネジメントプロセスと他のプロセスとの関連
- サイバーセキュリティとリスクマネジメント
- リスク分析と評価のタイミング
- 機器設計-機器要求事項とリスク分析の関係
- 一般的なリスクマネジメントプロセス
- リスクマネジメントと製品ライフサイクル
- リスクマネジメントワークシート
- IEC 81001-5-1:2021概要
- IEC 81001-5-1:2021 (JIS T 81001-5-1:2023) とは
- IEC 62304ソフトウェアライフサイクルプロセスのおさらい
- プロセス、アクティビティ、タスクの関係
- IEC 81001-5-1の構成のイメージ
- 箇条4:一般要求事項
- 4.1 品質マネジメント
- 4.2 セキュリティに関連するリスクマネジメント
- 4.3 リスク移転に関連するソフトウェアアイテムの分類
- 箇条5 ソフトウェア開発プロセス
- 5.1 ソフトウェア開発計画
- 5.2 ヘルスソフトウェアの要求事項分析
- 5.3 ソフトウェアアーキテクチャー設計
- 5.4 ソフトウェア設計
- 5.5 ソフトウェアユニットの実装および検証
- 5.6 ソフトウェア結合試験、5.7 ソフトウェアシステム試験
- 5.8 ソフトウェアリリース
- 箇条6 ソフトウェア保守プロセス
- 箇条7 セキュリティに関連するリスクマネジメントプロセス
- 箇条8 ソフトウェア構成管理プロセス
- 箇条9 ソフトウェア問題解決プロセス
- トランジションヘルスソフトウェアについて
- SBOMについて
- ソフトウェア部品表 (SBOM)
- サイバーセキュリティに関する顧客向け文書
- 補完的対策としてファイアウォール等を設置する
- レガシー医療機器について
- レガシー医療機器
- サイバーセキュリティに関する製品ライフサイクルの機能として表現したレガシー医療機器の概念フレームワーク
- 医療機関との連携
- サイバーセキュリティ対応手順書の作成方法
- Total Product Life Cycle (製品ライフサイクルの全体)
- 製造販売業者のサイバーセキュリティ対応の責務
- 設計段階におけるサイバーセキュリティ対策
- 市販後におけるサイバーセキュリティ対策
- IEC 62304との融合