本セミナーでは、セルロースナノファイバーの創製技術の現状と、樹脂との複合化技術、複合材料の物性評価、応用事例まで3名の講師が解説いたします。
(2012年6月28日 11:00〜13:00)
天然繊維の代表であるセルロースに関して、まず、これまで製造が困難であった「ナノファイバーとはどういうものか」 ということを概説する。 次に、トップダウン的加工法として最近開発した、天然セルロース繊維を表面から分子・ナノレベルの分子集合体を引き剥がす、水のみによる微細化およびナノ分散水化法 (水中カウンターコリジョン法) およびその応用例を紹介する。 さらに、セルロースナノファイバーを用いる複合材料化について、「ナノファイバーは細ければ細いほど利点があるのか?」の観点から検討する。
(2012年6月28日 13:40〜15:10)
植物系天然資源、中でも木質系天然資源は極めて豊富で、再生産可能な資源の代表である。木材からは短い繊維=パルプが取れるが、それらは「紙」として普段の生活にはなくてはならない存在である。このパルプ、その引張強度は数百GPaと意外に強い。しかし、もっとすごいのはパルプの強さの源にある。 竹を含め、多くのパルプはセルロース、ヘミセルロース、リグニンからなる。これらの割合はパルプの取り出し工程に影響されるが、元は2:1:1である。これらの成分の中、パルプの強さは結晶性部分を含んだセルロースのナノ繊維、MFC (Micro Fibrillated Cellulose) にある。パルプに強いせん断力を加え、解すとMFCが分離される。竹および木質パルプからは、処理の仕方によりさまざまな形態のMFCが分離できる。このMFC、微細繊維方向の引張強度は約2GPa、ヤング率も100GPaを超えると言われる優れもの。母材を樹脂 (プラスチックス) とする複合材料のナノフィラー、強化材として使えそうである。しかし、このセルロースナノファイバーを“うまく”使った例はほとんどない。 本講演では、セルロースナノファイバーの取り出し方、その応用例について、詳細に説明する。
(2012年6月28日 15:20〜16:30)
セルロースナノファイバは、高強度、低熱膨張性であるとともに、高熱伝導性も有する。本講演では、セルロースナノファイバの細さ (<100nm) と高熱伝導性に着目し、無機ガラス並みの高い熱伝導性を有する透明樹脂フィルムの作製方法とその諸特性について解説する。