火災は、急激に進行する酸化反応である。非平衡下の科学が未だ研究段階であり、高分子材料の難燃化技術を科学の形式知だけで開発できない。形式知で解決できない問題は、経験知や暗黙知まで動員して解決することになる。すなわち、科学で解決できない高分子材料の難燃化技術では、高分子材料の用途に適合した難燃化規格を定めることにより、問題解決できるようにしている。
しかし、高分子材料の用途は様々であり、ひとたび火災が発生すれば用途ごとに燃焼のリスクだけでなく燃焼時の現象も様々となる。このことから難燃性の規格は、用途ごとに決める必要性があり、その結果測定法も様々となり、不定期に改定される規格も出てくる実情を納得できる。
高分子材料の成形体を購入する立場であれば、納入業者に規格に合格しているかどうか確認すればよい。ところが、多種多様の業界に製品を納入している成形体メーカーは大変である。それぞれの業界ごとに製品が規格に合格するのかどうか確認しなければいけない。ここで手を抜く担当者は、材料メーカーにそれを求める。その結果、高分子材料の業界では、コンパウンドメーカーが難燃化技術の開発をしなければいけなくなる。 コンパウンドを難燃化するときに、最もよい難燃化手法を探すことになるが、「最もよい方法」を客観的に評価するには、それが科学的に証明されなくてはいけない。
本セミナーでは、高分子の耐熱性と難燃性について概説する。また、熱分析手法を用いた開発事例を説明し、新たな難燃化技術を開発するヒントを示す。さらに、2022 年に施行された法律により再生材の活用が本格化している実情を踏まえ、再生材の難燃化技術の事例も解説する。
高分子の難燃化技術は、トランスサイエンス (注) でありその問題解決にデータサイエンスは有効な手法の一つであり、Python によるディープラーニングによる回帰の結果についても言及する。 (注) 科学で問うことができるが、科学で答えることのできない問題。
- 火災と高分子
- 高分子の難燃化技術研究の歴史
- 事例:フェノール樹脂の難燃性
- 高分子の耐熱性と難燃性
- 難燃性の評価試験法
- 高分子材料の用途と評価試験法
- 極限酸素指数法
- UL94 評価試験法
- その他の評価試験法
- 高分子の難燃化手法
- 高分子の難燃化メカニズム
- ドリップ型難燃化手法
- 再生 PET 樹脂射出成形体
- 炭化促進型難燃化手法
- ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体
- ホウ酸エステル変性ポリウレタン発泡体
- 難燃化手法とプロセシング
- 難燃化技術とデータサイエンス
- データサイエンス概説
- タグチメソッド概説
- 難燃性コンパウンドの工程問題解決事例
- 難燃化技術と環境問題
- 環境問題の変遷概論 (3R から 4R へ)
- 各種法規制と難燃化技術
- 難燃性半導体ベルトの LCA
- 難燃化技術の特許出願動向
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