貴重な地下資源の消費を抑えつつ二酸化炭素を排出しない等の利点をもち、次世代原子炉の一つとして期待される核融合炉。
本セミナーでは、核融合炉の実現に向けて国内外で研究開発が活発に進められている2つの方式、「磁場閉じ込め方式」と「レーザー核融合」について取り上げ、核融合の基礎から、各国の政策やスタートアップ企業の動向、それぞれの原理、研究開発動向、実現に向けた課題、展望までを2名の講師が詳しく解説いたします。
〜最新動向と将来展望〜
(2023年8月25日 10:30〜12:00、12:50〜13:50)
「核融合」 (フュージョン) は太陽をはじめとする星々を恒久的に輝かせているエネルギー源です。これを地上で実現できれば、人工太陽としてエネルギー問題を解決する切り札となるだけでなく、地球温暖化を抑制する究極の対策として期待されます。また、より長期を展望するとき、地球寒冷化問題に対する備えとなります。2040年代をめざした商業発電を実現するため、現在、国家プロジェクトを中心とした原型炉設計が進むとともに、民間スタートアップ企業が多数立ち上がり、小型小出力核融合の早期実現を目指した新しい展開が始まっています。 本講演では、核融合研究、特に磁場閉じ込め方式の核融合研究の現状と将来展望についてわかりやすく説明します。また、磁場閉じ込め方式の核融合炉にとって心臓部である超伝導マグネット技術について、最新動向や将来展望についても紹介します。
(2023年8月25日 14:00〜16:00)
核融合反応を用いれば二酸化炭素と高レベル放射性廃棄物を出さずに,水素の同位体からエネルギーを生み出すことが可能である.核融合は究極のエネルギー源として,近年改めて、産官から注目を集めている.国内では内閣府の核融合戦略有識者会議で核融合原型炉開発の加速が議論され、国内の核融合スタートアップへのバックアップも検討されている。米国のバイデン政権は10年以内の核融合商用化という極めて挑戦的な目標を掲げるなど意欲的である。レーザー核融合が目指すのは、端的に言えば、実験室内に太陽を作ることである。太陽の中心圧力は2400億気圧であるが、レーザー核融合が目指すのもまさにこの圧力、場合によってはこれ以上の圧力であり、高出力レーザーを用いてこのような超高圧力を達成する。米国NIFでは間接照射中心点火というレーザー核融合の方式で、2.1 MJのレーザーで3.05 MJの核融合エネルギーを生成することに成功した。しかし、核融合炉の実現には、エネルギー利得100程度の高利得が不可欠である。日本では直接照射型の高速点火方式によるレーザー核融合の研究が、エネルギー利得100以上の高利得を目指して進められている。核融合エネルギーの実現は、極めて大規模で多様性に富む最先端技術の集約が必要である。ゼロエミッション・クリーンエネルギーという究極目標に向けた研究開発が、プラズマ科学、原子核科学、材料科学、レーザー・光学、放射線科学、システム制御科学、情報科学、量子科学の飛躍的発展を促す起爆剤となるだろう。 本講演では、レーザー核融合エネルギーの最新動向について講演する。
教員、学生および医療従事者はアカデミー割引価格にて受講いただけます。