脱炭素化に関して、米国で一番温室効果ガスを排出しているのは、運輸部門 (29%を排出) である。運輸部門のうち、乗用車はおそらく電気自動車が主流になるが、航空機・列車・船舶・大型車両では、「クリーンな液体燃料」が必須という声が多い。
航空機燃料については、ICAO (国際民間航空機関) において、「2021年以降、国際航空に関してCO2排出量を増加させない」との目標を採択している。国際線のような大型かつ長距離の運航には、電動化や水素燃料では無理で、液体燃料であるSAFの利用は必要不可欠と考えられている。路線や便数を増やそうとする航空会社は、排出量を増加させないために、SAFの採用が進むが、生産量はあまり増加せず、取り合いが始まっている。バイオマスを原料とする現在のSAF製造方法では、水・肥料・土地・食料との競合等の制約より、量の拡大が望めない。またSAFに要求される要求はかなり厳しい。
この中で、欧州連合 (EU) 理事会は、2035年にエンジン車の新車販売を禁止するというこれまでの方針を撤回し、「合成燃料燃料のみを使用する車両であれば販売を容認する」ことを正式に決定した。許される合成燃料の詳細や運用方法の詳細はまだこれからであるが、現在判明している要求内容は、かなり厳しいものである。
また、2035年時点での車両向けの合成燃料の価格は、現行の液体燃料よりもはるかに高価となる。また「合成燃料を用いてエンジン車で使用」した場合の総合エネルギー効率は電気自動車よりも極めて低いが、欧州の自動車会社のエンジン車へのこだわりは強い。
こういう状況の下、欧米ではガス・石油会社を中心に「合成液体燃料」に関する活動が活発化している。米国は今までバイオ燃料に力を入れていたが、CO2と水素を用いた小規模製造もテキサスで始まる。
この入り組んだパズルのような「脱炭素」と「カーボンリサイクル」の米国における現状と将来性について、米国に38年居住し、これらの流れをつぶさに見てきた講師が解説する。
- 米国の脱炭素の現状
- 欧州連合 (EU) 理事会の決定は
- 合成燃料は主流となるか
- そもそも合成燃料とは
- 各種の技術開発の状況
- MtG (Methanol-to-gasoline)
- RWGS (Reverse Water Gas Shift)
- FT (Fischer-Tropsch) 合成
- ATJ 技術 (Alcohol to JET)
- メタネーション
- 米国エネルギー省の方向
- 民間企業の動向
- 重要性を帯びるSAF
- SAFの概要と連邦政府の方針
- 主なSAF製造事業者と製造キャパシティ
- 航空会社や航空機会社の動向
- 米国におけるバイオ燃料の動向
- バイオエタノールとバイオディーゼル
- バイオ燃料増産の難しさ
- 理想と現実の狭間で揺れる「カーボンリサイクル」
- 日本はこの流れの中で何をすべきか
- 質疑応答/名刺交換
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