e-fuelは、船舶、航空、自動車用のクリーン燃料として期待されている。しかしながら、製造するために水素と併せて必要となるCO2の回収・利用・再排出という一連の挙動が、e-fuelのメカニズムと意義に対する正しい理解を阻害し賛否両論を巻き起こしている。更には、CO2排出削減効果の特定や帰属を難解にすることで、関連制度設計が非常に複雑になる可能性がある。制度が複雑になれば普及への障壁になる。
e-fuelはあくまで水素の次善策である。現在の化石燃料をベースとした成熟技術・インフラ・サプライチェーンを有効に活用しつつ水素を輸送・貯蔵・利用する手段である。e-fuelを普及させるためにはCO2排出削減効果の帰属に関する制度構築が求められるが、この制度は必ずしも科学的根拠に基づいたものにはならないリスクがある点には留意が必要である。他の選択肢との関係性を踏まえつつ、e-fuelを選択するとしても、本当にe-fuelは必要なのか、いつまでCO2を使い続けてe-fuelを必要とするのか、ということを考えなければならない。
e-fuelのメカニズムやそれに基づく意義を正しく整理し、近年の関連動向やその背景を概観しつつ、e-fuelのメリット・デメリットを議論する。
- e-fuelに関する最近の動向
- 国内外の動き
- 政策動向
- 水素とe-fuelの関係性
- なぜ水素?
- なぜe-fuel?
- e-fuelは水素なのかそれともカーボンリサイクルなのか
- ブルー水素からのe-fuel?
- 水素、e-fuel、CCU、CCSの分類学
- e-fuelが活躍できるかもしれない用途は?
- 船舶、航空、自動車
- 電気自動車、燃料電池自動車、水素エンジン自動車とe-fuel自動車の関係性
- エネルギー貯蔵
- 厄介な制度
- 避けられないCO2帰属の問題
- CO2排出削減効果は制度設計次第という本質的な欠点
- 揺りかごから墓場まで
- エネルギー・産業の観点
- エネルギーシステムに求められるシンプルさ・効率性
- 国内既存産業との関連性
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