第1部 繊維強化複合材料の力学的特性と損傷・破壊
(2023年7月7日 10:00〜11:30)
繊維強化複合材料の力学的挙動は、損傷・破壊を含めて、複雑で理解・推量不可能に見える。しかし、不均質性や界面の影響を考えてきちんと整理すれば、思った以上に力学的現象を把握・推測が可能になる。ところで、自然界の生物材料 (木材、竹、骨等) は複合材料に分類できるが、これらの材料に関しては経験を生かして (難しい数学を使うことなく) いろいろな分野に便利に・上手に応用している。製造現場では、「材料力学や構造力学といった難しい理論など使わない」という人もいる。また最近ではコンピュータによるシミュレーションで実現象を再現したり、AIを設計に生かすなどコンピュータサイエンス技術の発展も著しい。この方面からも材料力学や応用力学といった基礎学問は必要なくなるという声も聞く。しかし、実際の構造物や部材の開発・設計において、材料に関する知識とそれを理解し生かす理論が必須となり、その全体を正しく把握できる人材が組織のキーとなる。
本講義では、複合材料の損傷や破壊現象を紹介し、現象を理解するのに有効な材料力学や破壊力学の基礎を概説し、学問の目を通して破壊現象を推論することを試みる。複合材料に関する知識を応用する方法を学んで、これからの研究・開発に自信を持って取り組めるようになってもらうことが本講義の目標である。
- 繊維複合材料とは
- 複合材料は何故軽くて強いのか
- 複合材料の弱点
- 複合材料の力学的評価のための準備
- 複合材料の力学の基礎
- 複合材料の弾性特性
- 複合材料の強度と強度則
- 不均質性に起因する応力
- 複合材料の損傷と破壊の例
- 引張強度
- 圧縮強度
- 層間剥離
- ボルト結合部の破壊
- まとめ
第2部 ピンホール式引き抜き試験による樹脂/繊維の界面剪断特性評価
(2023年7月7日 12:20〜13:20)
複合材料における繊維/樹脂界面の挙動は一見複雑に思われる傾向がありますが、メカニズムを分解して一つ一つ調べていけば、単純に見えることがあります。分解することが可能な試験法と、そのための「視点」の一端をご紹介したいと思います。
- ピンホール式引き抜き試験とは
- 樹脂/繊維の界面接着特性の重要性
- 様々な界面試験法とピンホール式引き抜き試験法の特長
- 評価試験機の開発
- 試験機の特長
- 界面の力学
- 剥離か塑性か?
- シアラグ理論による理解
- 本当の界面強度とは?
- 有限要素法による考察
- 複合材料設計における界面特性評価
- 試験片製作における樹脂特性の影響
- 繊維周りのひずみ速度の影響
- 繊維束における界面挙動
- 繰り返し負荷による界面強度
- まとめと今後の展望
第3部 フラグメンテーション試験による樹脂/繊維界面特性評価
(2023年7月7日 13:30〜14:30)
- マトリクス樹脂の力学的特性評価
- 樹脂物性に着目した一方向材の引張強度予測
- フラグメンテーション法による繊維破断挙動の評価
- 強度予測結果と実験結果の比較
第4部 マイクロドロップレット試験による樹脂/繊維の界面強度評価
(2023年7月7日 14:40〜15:40)
- 樹脂/繊維複合界面の強度評価手順
- マイクロドロップレット試験
- 試験片の作製
- 試験法
- 結果とその解析
- 解析モデル
- 熱応力解析
- 損傷解析
- おわりに
第5部 プッシュアウト試験、マイクロドロップレット試験による 樹脂/繊維の界面特性評価
(2023年7月7日 15:50〜16:50)
- マイクロドロップレット試験による繊維/樹脂の界面剪断強度測定
- 概要
- 測定事例
- プッシュアウト試験による繊維/樹脂の界面特性評価
- 概要
- 試験装置;ナノインデンター
- 測定事例
- マイクロドロップレット試験とプッシュアウト試験の比較
- 炭素繊維/エポキシ樹脂の比較事例
- 炭素繊維/ポリアミド樹脂の比較事例
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