本セミナーでは、全固体電池の開発、リチウム・コバルト・ニッケル資源の開発状況と価格を見通し、2030年に向けた次世代自動車の未来像を展望、日本企業にとっての事業機会について解説いたします。
脱炭素の世界的な流れのなか、電気自動車 (EV) をはじめとした環境対応車が、多くのエネルギー専門家の予想を超えるスピードで販売を伸ばしている。2022年における電気自動車の世界販売台数は789万台と新車販売の10%を占めるまでに成長し、世界最大の電気自動車メーカー・テスラの新車販売台数は131万台と前年比40%増加している。2030年における電気自動車販売台数は3,600万台を超えるという意欲的な見通しもなされている。電気自動車の生産台数の増加とともに、リチウムイオン電池に必要不可欠なレアメタル、レアアースの価格が、資源エネルギー大国ロシアによるウクライナへの侵攻、インドネシア等の輸出規制により高騰している。2022年春には、リチウム価格は前年比6倍、ロシアが主生産国となっているニッケルは過去最高値、その他にも、ネオジム、ジスプロシウム等のレアアース価格も高騰した。レアメタルの価格高騰は、電気自動車のコストの3割を占めるリチウムイオン電池の価格上昇につながる。レアメタル価格の高騰とレアメタルに係わる地政学リスクへの対応から、三元系ではない、コバルト、ニッケルを使わないリン酸鉄リチウムイオン電池の技術革新が生まれ、テスラ等の電気自動車にも搭載されている。三菱マテリアルをはじめとした金属メーカーによるレアメタルのリサイクル研究も始まっている。 2023年に入り、世界的な電気自動車の流れは強まっており、これまでは電気自動車に距離を置いていると思われてきた世界首位の自動車メーカーのトヨタが、2021年12月14日に2030年に電気自動車の世界販売台数を350万台と大幅に引き上げ、投資額も蓄電池を含めて4兆円と、電気自動車に注力することを表明した。さらに、2023年春には社長交代とともに、さらなる電気自動車強化への動きを表明している。2022年1月にはソニーも、電気自動車をエンタテインメントの一つとして、参入することを表明し、日本を代表するソニーとホンダが手を組み、自動車の中心がソフトウェアとなる大変革と、既存の大手自動車メーカー、IT企業、新興企業を巻き込んだ壮大な、「グレート・ゲーム」が始まった。COP26 (第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議) において、世界はカーボン・ニュートラル (温室効果ガス排出実質ゼロ) に向かうことで一致した。EV (電気自動車) 、FCV (燃料電池車) 等の開発・生産に、世界の大手自動車メーカーが研究開発競争を繰り広げ、新興企業が事業機会を狙っている。米国のテスラと、中国のBYD、米国のGM、フォード等との電気自動車販売競争が熾烈なものとなっている。その他の自動車メーカーのEV販売台数も、大きく増加している。日本を含めた世界において、脱ガソリン車への動きは加速している。英国は2030年、フランスは2040年、米国カリフォルニア州とニューヨーク州は2035年までに、ガソリン車、ディーゼル車の販売禁止を打ち出し、米国バイデン政権も2030年に新車販売の50%を電動化することを表明している。日本も2030年代半ばには、ガソリン車から、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等の電動化を目指すこととしており、2022年6月には軽自動車EVの販売も本格化している。自動車販売が好調な中国は、2035年には新車販売の50%について電気自動車をはじめとするNEV (新エネルギー車) として、残りの50%をハイブリッド車とする環境対応を打ち出し、テスラを追い抜くべく、トヨタ、フォルクス・ワーゲン、GM等の大手自動車メーカーが、電気自動車とリチウムイオン電池の開発競争を強化している。電気自動車は、トラック部門にも拡大し、ダイムラーは、航続距離800キロメートルの大型トラックを2024年に量産化する。 リチウムイオン電池の技術革新と価格低下により、意欲的な見通しにおいては、2040年の世界の電気自動車市場は、新車販売の50%以上を占める。電気自動車は、スマート・フォンと比較して、1万倍近くのリチウムイオン電池の容量を必要とし、レアメタルであるリチウム資源、コバルト資源の偏在と、需要の増加に供給が追いつかないうえに、ロシアによるウクライナへの侵攻もあって、正極材に使うリチウム、コバルト、ニッケルというレアメタルの価格も高騰した。世界は、電気自動車の普及に向けて、レアメタル、レアアース争奪戦の様相を見せている。電気自動車の普及は、ガソリン車に依存した部品メーカーの淘汰を促し、既存の自動車企業、部品メーカーとIT企業の提携を通じて、日本の自動車メーカーの勢力図を変貌させる可能性が強い。米国をはじめとした世界各国が、地球環境に優しい次世代自動車育成の支援策を強化する動きを強めている。リチウムイオン電池については、正極材、負極材、電解液、セパレーター等の素材において、日本企業が世界最先端の強みを持っていたが、製品、部品そのものは中国企業、韓国企業に世界市場を席捲されている。予想よりも時間がかかっている全固体電池の開発、リチウム、コバルト、ニッケル資源の開発状況と価格を見通し、高価なレアメタルを使わない蓄電池の開発動向等、2030年に向けての次世代自動車の未来像を展望し、レアメタルを含めて、日本企業にとってのビジネス・チャンスについて次世代自動車の第一人者が分かりやすく解説する。
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