第1部 塗膜の形成とその制御
(2023年6月30日 10:30〜12:30)
フィルムやシートの表面を塗装・コーティングし機能を付与するためには、ウェットコーティングと呼ばれる方法が広く用いられている。これは、高分子やコロイドなど、主に固体が溶媒中に溶解・分散した液体を基材に対して塗布し、乾燥させることで固体薄膜を得る方法である。こうした方法は簡易なことから広く用いられているものの、塗膜製造効率を向上させつつ、塗膜厚みのばらつきや、気泡・しわの形成など、塗膜形成におけるトラブルを回避するためには、溶媒の乾燥条件や用いる素材を適切に選択する必要があり、経験集約的なプロセスになっていることが多い。
本講演では、こうした乾燥過程を用いた塗膜制御の一般論を紹介しつつ、高分子や塗布型電子材料を用いた塗膜制御の最近の進展を紹介する。
- 塗布・乾燥過程の科学
- ぬれの科学の基本
- 乾燥の科学の基本
- 高分子溶液の乾燥と塗膜制御
- 塗膜における気泡形成と制御
- 塗膜におけるしわの制御
- プリンテッドエレクトロニクスにおける塗膜制御の進展
- サブミクロンスケールの配線印刷技術
- 分子レベルの塗膜厚み制御
- ぬれない表面への膜作り
- 塗布型デバイスの実状
第2部 塗布膜乾燥の形成過程と膜厚制御、トラブル対策
(2023年6月30日 13:30〜16:30)※途中、小休憩含む
塗布膜の乾燥機構の解明は、様々な工学等の分野で求められている重要な課題である。塗布膜の乾燥においては、例えば乾燥後の膜厚分布が均一になることが求められるが、多くの場合、膜厚分布が均一にならず、また乾燥条件によって膜厚分布が変化することが経験的に知られていた。均一な乾燥後の膜厚分布を得るためには、塗布膜の乾燥過程の機構を解明することがまず必要で、その解明を経て、必要な制御を系に施すことにより、均一な乾燥後の膜厚分布を得るという目標へ近づくことになる。均質な膜分布を得る場合も同様である。また、乾燥後の様々な不良・欠陥を克服する際にも、同様のプロセスが必要となる。
本講演では、塗布膜の乾燥プロセスの機構を解明するにあたり必要となる物理学的知識、考え方の講義から始めて、それらを基にした上記プロセスのモデル化の実際、およびその数値シミュレーションの実際を概説し、塗布膜乾燥機構の本質を理解する。また、これに基づいて様々な塗布膜の制御の方法を物理学的に考察する。この講演が、今後参加者が実際に扱う系の乾燥過程の理解および乾燥トラブル対策のヒントとなることを目指す。
- 塗布膜の乾燥工程の概要と課題
- 乾燥させるとは?
- レジスト塗布工程の例
- 液体の理論
- 液体の一般理論
- 液体論からみた蒸発の理論
- 液体の凝集力の起源
- 液体の理論のモデルへの導入のポイント
- 溶液の理論
- 溶液の一般論
- 高分子溶液の特徴
- 溶液の理論のモデルへの導入のポイント
- 表面・界面の理論
- 表面張力
- 界面のぬれ
- 界面のゆらぎ
- 表面張力波と緩和時間
- 表面・界面の理論のモデルへの導入のポイント
- 溶媒の蒸発速度の理論
- 蒸発速度の式
- 溶液中の溶質・溶媒の動力学
- 拡散方程式
- 流体方程式
- 揮発中という非平衡状態での動力学
- 平坦な基板上に塗布された高分子溶液の揮発過程
- レイリー数とマランゴニ数
- 最もシンプルなモデル化
- シンプルなモデルの改良
- 精密なモデル
- 数値シミュレーション結果の例
- シミュレーション技術
- 拡散方程式の解法8.2 流体方程式の解法
- 実験によるモデルの検証
- モデルの発展
- 3次元モデル
- 溶質の種類が複数ある場合
- 溶媒の種類が複数ある場合
- 具体的な現象へのモデルの応用 (様々なムラ等)
- マランゴニ効果の考慮
- 膜厚制御の実際、今後
- 様々なムラ等の制御の例
- 端部の凹凸の制御の例1:温度管理
- 端部の凹凸の制御の例2:気圧管理
- 端部の凹凸の制御の例3:濃度管理
- 様々な形状への応用
- 基板の側面への塗布の影響
- 球状体への塗布膜の場合
- 塗布膜の設計における留意点
複数名同時受講割引について
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