科学技術の発展による我々の生活は豊かになった。これは人類が英知をもって天然資源を活用してきた結果である。しかし、活用可能な資源量は無尽蔵ではなく、永続的に利用する再生・リサイクルが必須である。様々な再生・リサイクル法が提案.されているが、その中で、前処理として原料 (廃棄物) を粉砕し、活性化して化学的処理あるいは物理的処理すると得策である場合が少なくない。
本セミナーでは、有価物を含む固体を粉砕し、活性化して、その後に化学的処理 (水洗、酸あるいはアルカリ処理) して含有有価物を回収する事例や、粉砕後に物理的処理 (加熱) して有価物を回収するプロセスを紹介する。ポイントは、粉砕処理での固体の活性化機構であり、メカノケミストリーとして知られる現象を理解する点である。
本セミナーでは、未利用資源に含まれる有価物を無理なく回収した幾つかの事例を紹介する。そこから上記した事例の理解ばかりでなく、課題の解決に繋がるヒント・糸口を解説するようにする。
固体の粉砕において、生成した微粒子が付着・凝集し易いことを経験されておられる方も多いと思われる。その要因は固体表面の活性にあり、これがメカノケミストリーで説明できる。メカノケミストリーは固体へ加えられた機械的エネルギーが固体内に塑性変形として蓄積される結果発現する効果であり、微粒子の付着凝集ばかりでなく固体表面の活性等として周囲の物質とも相互作用し、究極は非加熱での固相反応へと発展する。この現象を利用すると、未利用固体から含有する有価物を簡単に回収するなど、資源再生・リサイクル法としても活用可能である。
本セミナーでは、このメカノケミカル効果がどのような機構で発現するのか?を理解し、その制御法についての理解を深める。この現象を利用した様々な未利用資源に含まれる有価物回収の事例を学習し、応用力を培う。そこから新たな資源処理・再生・リサイクルについてのアイディアが生まれる可能性が高いし、各自が抱える課題の解決のためのヒントやポイントも得られる。
- 粉砕によるメカノケミストリー
- 粉砕過程で起こるマクロとミクロな変化
- メカノケミカル効果の発現機構と評価
- 粉砕による各種固体の結晶構造変化
- メカノケミストリーによる微粒子表面の活性化
- 微粒子表面雄活性化
- 微粒子表面での粉砕助剤の挙動
- 活性化した微粒子表面からの不対電子
- 粉砕雰囲気中の水分の役割
- 未利用資源の再生とリサイクル事例
- 無定形化の利用
- ITOスクラップからのIn,Sn回収
- 三波長型廃蛍光管からのレアアース回収
- 廃LIBからのCo.Ni回収
- 固相反応の利用
- 廃ITO端材からのIn・Sn金属の回収
- EPダストからのV回収
- 廃LIBからのLi,Co回収
- 磁石端材からのレアメタル回収
- 廃石膏ボードからのプラスター生成
- ハロゲン含有樹脂からの脱ハロゲン
- ポリ塩化ビニル (PVC) の脱塩素による分解
- ポリテトラフルオロエチレン (PTFE) の脱フッ素による分解
- ポリフッ化ビニリデン (PVDF) の脱フッ素による分解
- ヘキサブロムベンゼン (HBB) の脱臭素による分解
- 天然資源の処理と有価物回収
- タルクからのMgの選択的回収
- タルクと二水石膏からのプラスター生成
- カオリナイトからのゼオライト合成
- 硫酸塩鉱石からの水酸化物と炭酸塩の生成
- シーライトからの可溶性タングステン塩の生成
- バストネサイトからのレアアース回収
- バイオマスや樹脂などからの水素製造
- バイオマス (セルロース) からの高純度水素の製造
- 廃プラスチック、稲藁、廃紙、下水汚泥などからの水素の製造
- 課題の解決策
- 大量処理法は?
- メカノケミカル効果 (機械的活性化) の制御法は?
- 湿式粉砕でのメカノケミカル効果は可能か?
- メカノケミカル効果を迅速に達成するにはどうすればよいか?
- メカノケミカル効果を支配する因子は何か?
- メカノケミカル効果に影響する助剤は?
- メカノケミカル効果とコンタミネーション (摩耗) の関係?
- 質疑応答
- 時間の許す範囲でセミナー参加者からのご質問に対応させていただきます。
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